※綾時生存、記憶所持パラレル
「あ…らがきさん!砂糖はいずこ!」
俺はいるはずもない荒垣さんを呼ぶ。何故って砂糖が見つからないからだ。砂糖は二番目に重要なものなのにコノヤロウ!
「男主名前、なにやってんの?」
「砂糖探してる!」
「砂糖?」
順平が話しかけてきた。どうせ順平は可愛い彼女さんいるしバレンタインなんて幸せイベントでしかないんだろうな。でもあのコ、料理に興味なさそう。
「砂糖なら昨日、風花が全部使っちゃったぜ?」
「はあ?順平買ってこい!2分!」
「なんで俺が!無茶言うな!」
「俺が台所から離れたらなにが起こるかわからねえ」
「…イッテキマス」
そういえば昨日、台所から焦げ臭い感じがしてた気がする。砂糖全部使うってどのくらいのものを作ったんだろう。もしくは何回失敗したのだろう。そして成功したのだろうか。
「あれ?男主名前くん何してんの?」
「ケーキ作ってる」
次は岳羽が来た。そんなに俺が台所に立っているのが珍しいんだろうか。
足元にはコロマルが。お前もか。
「え、男主名前くん作れんの」
「荒垣さんに教えてもらってたし、一緒に作ったこともある」
「へー、え、本命?」
「……まあ」
「へー、へー!」
「うるさいっ!」
本命で悪いか畜生。
ニヤニヤと岳羽は俺を見ていやらしく笑う。見てて良い?と聞かれて俺は頷いた。手を出さないでくれれば問題無し。
順平早く帰ってこい。山岸が来る前に。
「たっだいまー!」
「順平おかえり!早く!」
「そうあせんなって」
砂糖を受け取って俺は作業に戻る。順平ありがとう。
ちゃっちゃと作って渡しに行くんだ。絶対アイツは喜んでくれる。眉を下げてへにゃって笑って、ありがとうって。
「そういえば綾時に会ったから連れてきちった」
「お邪魔してます」
「はあ!?」
確かにそこにいるのは黄色いマフラーをたなびかせた綾時。いやいやなんの冗談ですか。俺の計画丸つぶれだよ。
「男主名前くんが料理してるって聞いて来ちゃった」
「…ソウデスカ」
どうすれば良いのこれ。俺の中では何も知らない綾時に渡して綾時びっくり!ってのをやる予定だったんだけど。
とりあえず無言で作る。
「で、その本命は誰にあげるの?」
岳羽爆弾投下。
ああもう、俺はどうすりゃいいの。ちらっと綾時を見ると綾時はニコニコ笑っている。人の気も知らないで。
「僕のだよ。ね、男主名前くん」
「あ…はい」
楽しみにしてるから、なんて。
なんだ知ってたのか。ちょっと悔しいけどまあ良いや。
「ゆかりっち、俺たちは退場しよっか」
「…そうした方が良いかも」