どうも南蛮の方ではこの時期に「ばれんたいん」という行事があるらしい。
ちなみに情報源はおしゃべりな友達から。


「好きな人に、ねえ…」


その、ばれんたいんとやらの話を鉢屋にしてみた。彼は面倒だと言いながらも祭事が好きだから。
期待していた反応は無く、つまらなさそうに鉢屋は障子から覗く外を眺めていた。


「あら、鉢屋はこんなくだらない行事が好きだと思ったのだけれど」
「まあ好きだよ。くだらなければくだらないほど」
「けれど興味無さそう」


そうかい、と鉢屋はさっきから頬杖をやめない。別に興味無いなら無いとはっきり言ってもらいたいものだ。そうすれば話すのもやめるのに。



「苗字、"ばれんたいん"に何を贈るか知っているかい?」
「…生憎、知らないわ」
「そんなので私に語ろうとしたのか」
「鉢屋は知っているの?」
「もちろん」


口を開けてごらん、と鉢屋は頬杖をやめて私を見る。どうしてそんなことをしなければならないのかと思いつつ、言われた通りに私は口を開ける。
そんなに鯉みたく大きく開けなくて良い、と笑いながら言われ恥ずかしくなって少し口を閉じる。鯉みたいって…!

続いて目を閉じてと言われたから大人しく従った。
すると唇に何かが触れた。なんだろう、指?鉢屋の指だろうか、どうして触れる必要があるのだろう。
そしてまた違うものが唇に触れた。これは何?



「…っ!」


何かが口の中に入ってくる。それが舌に触れた途端、苦いものが口の中に広がった。
これはいったい何?


「苦いだろう?」
「な…にこれ」
「ちょこれいと、と言う南蛮のものだ。本来は飲み物なのだが」
「もしかしてこれが"ばれんたいん"に贈るもの…」
「ああ、そうだ」


信じられない、こんな苦いものを好んで口に入れるなんて。私は甘いものが好きだから余計に駄目。
そう一人で考えていると、鉢屋が私を呼ぶ。「おい苗字」何よ。

「お前、私が何をしたのか分かってるのか?」
「はい?何かしたっけ?」
「……口吸い、したんだが」




あら
なるほどさっき唇に触れたのは鉢屋のソレだったわけ。不破の顔の下の顔はきっと真っ赤なのだろう。私のことを鈍感、と言いながら鉢屋はその大きな手で自分の顔を覆っている。


「…随分と甘いものをありがとう」
「ちょこれいとは苦かっただろう」
「いいえ、甘かったわ」
「味覚が鈍っているのか?」


甘い甘いチョコレート



鉢屋がそんな甘いことするから、とても苦い「ちょこれいと」も甘くなってしまったわ。





2010.02.14
崇さんリクエストの、鉢屋で甘々です。
男主女主まかせていただいたので、中々書かない女主で書かせていただきました。
甘々自体あまり書かないのですが、甘くなっているでしょうか…?
お題に沿ったものになっていれば嬉しいです。

崇さん、参加ありがとうございました!
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