火薬委員会に所属してます苗字名前です。
今日は委員会もなくて、久しぶりにのんびりできるなあなんて思っていたんだけど。


「ふっかいなあ…」


穴にはまっています。
ええそうです。あの綾部喜八郎先輩が掘りなさった蛸壷です。
生憎、苦無も何も持っていないから自力で脱出は不可能で、それに誰も通らないんだよここ。助けが来るのはいつのことになるやら…。

ため息をついたら、ザッ…と足音が聞こえた。誰か来た!
この際誰でもいい。伊賀崎でもジュンコでもきみこでも立花先輩でも!



「すんませーん!誰かあー!」



穴の外に向かって大声で誰かを呼ぶ。1年は組の良い子でも良いよ!
すると誰かの影がひょこっと穴の中を覗いた。逆光で顔は見えない。


「名前かー?」
「お、おう!助けて!」

ひょこっと覗いた人物は俺の名前を呼んだ。じゃあ知り合いだ。声はそんなに低くなかったから先輩じゃない。伊賀崎の声でもない。
降ろされた縄梯子を掴んで俺は穴から脱出する。
助かった。


「おう、浦風だったのか」
「第一声がそれか」
「助けてくれてありがとう」


俺の予想は当たっていた。助けてくれたのは先輩でも伊賀崎でもなく、は組の浦風藤内だった。
服についた土を掃っていると、浦風はじっと俺を見てくる。え、なんか顔についてる?

「…なに?」
「あ、何でもない」
「……すっきりしない」

どんなくだらないことでも良いから言ってもらいたい。じっと見返すと浦風は怯んだように一歩下がった。








「…ただ、名前と2人っての初めてなんじゃないかって思っただけ」


どういう意味か分からず瞬き数回。
言われてみれば俺はいつも伊賀崎がくっついてくるし、浦風は浦風で三反田と一緒にいるイメージがある。お互い一人ってのが珍しい。

「なるほど確かに」
「……だろ?そういえば何で名前はここに?」
「委員会が無くて散歩してたら…」

ご愁傷様、と言いたげな哀れみの目で見ないでくれ!
そういう浦風は?と聞くと
綾部先輩が蛸壷を掘ったはいいけど目印を置くのを忘れたという問題発言を投下なさったから、誰か落ちたかもしれないと様子を見に来たらしい。
やっぱり落ちてた、とため息をつかれた。俺は悪くない…。




「浦風も苦労してんだな」
「作兵衛に比べたら全然」
「まあ…うん」

作兵衛はもう…なあ。
じゃあ僕は委員会に戻るから、と浦風は言う。そうか作法委員会はあるのか。


「もう落ちるなよ」
「保障はできない」
「仮にも忍たまだろ?」
「また浦風が助けてよ」
「……仕方ないな」



今度また2人で話そうって言って浦風は走って委員会へ戻っていった。作法委員会ってなにやってるんだろう。

浦風がいなくなって一人残った俺は何か不思議なモヤモヤがあった。何なんだこのモヤモヤは。




「こいにおちーるおとーがした…?」



いやいやそれは無い。無いと信じたい。
でもさ、何か浦風が他の人と違うように見えたんだよ。眉を下げて困ったように笑うのを見たときとか、2人で話そうって言ったときの笑顔を見たときとか。

もし、もしそうだと仮定しよう。
どうして俺は今まで気づかなかったんだ。俺の馬鹿!
平成では見つからなかった俺の運命の人かもしれないんだぞ!うわ自分で言ってて気持ち悪い。


2010.01.20


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