いやホント、何度夢であってほしいと願ったか。この布団がベッドになれとか、朝目覚ましで起こされたいとか。何度願っても意味はなくて、今朝もまた布団で、友の声で目を覚ました。 「名前起きろ!」 同室の左門がゆさゆさと俺を起こす。起きてる、起きてるから揺らすのやめて。脳がシェイクされて記憶飛ぶ。 「起きてる…」 「おはよう!」 「…おはよ」 じゃあ僕は朝のランニングに行ってくる!と左門は部屋を飛び出した。あの方向音痴な左門を止めない理由は、ヤツが必ず帰ってくるのを知っているから。まあ、帰ってきたということは、アイツを連れてくるということなんだけど。 もう一寝入りくらいできるかな、と布団に潜り込んだ。俺は寝る。できれば今日はサボりたい。乗り気じゃないのだ。 「っぎゃあ!!」 首元を冷たい何かが這った。わ、わわ…今日はジュンコなのか。ジュンコが来るならまだ飼い主のほうがマシだ。だって人間だもの。 「名前、おはよ」 「お、おはよ…」 「寝癖すごいよ」 「うん、それより、あの」 ジュンコを退けてください。 平成生まれの俺は虫とか爬虫類とか、そのへんの諸々の耐性が無いためヤツラが大嫌いだった。軟弱なもやしっ子だったのだ。だから、毒虫やら毒蛇やらが大好きな伊賀崎は言わば天敵である。なのに、なのになのに! 「ほら名前、準備しないと」 この伊賀崎孫兵という人間は俺のことが好きみたいなのだ。 → |