「どうしよう…こんな幸せで良いのか?」 「邪魔くせぇ退け」 のろけに来たのかこいつ。 明日のテスト勉強をしていたところ、名前がやってきた。何の用かと思ったら、さっきからこんなことばかり言っている。何故俺のところへ来て言う。 「作兵衛の膝は俺の予約席だ。誰にも渡さねえし退けねえ」 「退け」 こんなヤツでも友達だし、もう3年目になる付き合いだ。 こういうとき、何を考えているのかはなんとなくだけど分かる。 名前は何をしていいかわからないんだ。 「んで、どうだったんだよ」 「うえぇ、な、何が」 「藤内と」 「うわあぁぁああ!!」 ああもう声でかいんだよ。しかも近い。 名前はどうして俺が、名前が藤内のことを好きだってことを知ってるんだと言いたいんだろう。 「安心しろよ。俺しか知らないから」 「な、な、ななな…」 「学園を出てくとこを見た」 「………いえい」 いい加減にその頭を下ろしてほしいんだが。重い。 そんな俺の願いは叶うことなく、名前はうなだれて更に俺に体重をかけた。 「…俺さー……藤内のこと好きになっちゃってさ」 「あんまり聞きたくなかった告白だな」 「俺だって信じらんねえわ」 ごろんと名前は俺に乗っかったまま頭の向きを変える。 コイツが最初、好きな人ができたなんて言い出したときはどんなくのたまかと思った。今までそんなに恋愛事に興味なさそうにしていた名前が興味をもつ人なんて、どれほどに綺麗か、個性的か。 それがまさか藤内だとは。 男色のケがあるというあんまり知りたくなかった事実を突き付けられてため息を数回ついた。 くのたまであったなら協力してやろうと思った。だがちょっとこれは考えさせてもらいたい。名前も藤内も友達なんだ! 「…なんで藤内?」 「恋に落ちる音がしたから」 「ふざけんな」 「……いやでも本当に、今までなんともなかったのに急に藤内が他の人と違うように映ったんだよ。やること全部が可愛いとか思えちゃって」 「…可愛い…?」 「藤内は可愛いんだよ!!」 スパンッと襖が開いた音がした。俺と名前がそちらを見ると、そこには藤内が立っていた。 ああ、これは聞かれていたな。藤内って結構表情読めないけど、分かるときは分かる。動揺が目に見えている。 「と、藤内…」 名前も動揺しだした。 さてと、邪魔者は退散しなきゃな。 名前、男は当たって砕けろだ。 2010.02.02 |