「……名前が起きてる」

「おう、おはよう」



いつも通り廊下を走っていた左門を捕まえて、名前を起こそうと部屋に向かったら名前が起きていた。
今日は休みだからほっといたら昼まで寝ちゃう名前がだよ?驚いて左門の手を離してしまった。

「名前、今日はちゃんと起きたんだな」
「たまにはな」

変わってしまったからだ。そうに違いない。
今日は出かけるから寝坊するわけにはいかないと、はにかみながら言った名前を見て確信した。一人で出かけるんじゃない。友達と行くのでもない。名前を変えてしまった人と行くんだ。
嫌だ。変わらないで。僕を見てとは言わないけど、僕を忘れないで。


「伊賀崎は?」
「…なにが?」
「話聞けよ。何か買ってくるもんあるか?ついでに買ってくるけど」
「……いや、とくに無い」
「そっか」


じゃあ、行ってくる。と言って名前は部屋から出て行ってしまった。僕と左門が残された。
呆然と名前が出て行った襖のほうを見ていると、左門が僕をじーっと見ていた。




「左門?」
「孫兵、言いたいことははっきり言ったほうが良い」
「…」
「言わなきゃわからないぞ。名前は完璧ではないから」



「……そうだね」




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