名前が変わった。 ほんの少しだけ変わってしまった。 何かを見る目を、何かを想う感情を名前は持ってしまって ああ、変わってしまった。 「大丈夫だよ、ジュンコ。名前は離れたりはしないさ」 不安そうに声を上げたジュンコの頭を指で撫でてやる。不安になっているのは僕のほうだった。名前が離れるのは嫌だと思っているのは僕だった。 「…3年になるのか」 ふと1年の頃を思い出した。名前と出会ったのも1年の時である。 ジュンコが迷子になってしまって僕は必死で捜していた。まだ幼かった僕は泣きそうになっていた。そんなときに叫び声が聞こえた。 もしかして、と思って叫び声の方へ行くと名前がいた。その頃は名前も何も知らなかったんだけど。 名前は尻餅をついたまま、前方にいる何かに向かって怒鳴り付けている。前方にいたのはジュンコだった。 その時、すぐに飛び出してジュンコのところに行きたかったはずなのに、どうしてか僕は名前の様子を見ていた。 『そっから近寄んなよ、もっちょい待って、心の準備ができたら飼い主捜してやるから、お前野生の蛇じゃないだろう?お前と出会う前に何かを捜してるヤツを見たんだ。多分そいつが飼い主だろう。ああ待て待て!ストップ!ダメゼッタイ!』 ジュンコに向かって必死になってそう言う名前。名前がいうヤツは僕のことだろう。 どこで出て行こうか分からなくなって、どうしようかと思っていたら物音をたててしまって、名前がこっちに気付いた。 そうして、僕たちは出会った。 「あの時は、こんなことになるなんて思いもしなかった」 名前に対して特別な感情を持って、自分からこうやって近づこうとしている。 名前が幸せならそれで良いと思う反面、けれど自分は?という思いもある。 僕はどうしたいんだろう。 2010.01.22 |