奴が、私たちと違うのは何となく分かってた。



南蛮人が来たぞ、と噂が流れた。
そりゃあ私も興味があった。南蛮人ってことは言葉は通じないのだろうかとか。
そして見た奴の姿は、確かに南蛮人と見紛う髪色をしていた。でも目は真っ黒だ。私たちと一緒じゃないか。

そのときは声をかけなかった。
長屋に戻って、奴に変装できやしないかと私はいたずら半分に考えて試してみた。

駄目だった。
あの髪色が真似できない。
そして気付いた、あの髪色は偽物だ、と。
あの色を作り出すことができなくて、悔しかった。いつか絶対、奴に変装してやると幼い私は何かに誓った。




「なあ苗字、その髪色なんだが」
「これ?」
「どうしてそんな色なんだ?」



4年になった頃、私は苗字に聞いた。
苦笑いをして苗字は自身の髪をいじる。
えっとね、なんて言って苗字は答えた。


「染めたんだ」
「どんなもので染めたんだ?」
「…教えない」
「はあ?教えてくれたって良いだろう!」
「教えなーい!」



ちなみに今でも苗字は教えてくれない。
だから私はずっと必死なのだ。あの髪色を真似ることに。
ずっと、ずっと…。





鉢屋三郎の場合





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