最初は名前も知りませんでした。



2年生になって、南蛮から来たんじゃないかと思わせる髪を金に染めた人が、い組に転入してきた。
彼はそのなりからすぐに有名になった。

彼はい組に入ったにも関わらず、成績が良いわけじゃなかった。
体力なんか、1年生と同じくらいだった。座学はこれからだったけど。


やがて皆の彼への興味が薄れてきた頃、僕と三郎は彼に話しかけた。



「え、双子?」



期待してた反応に嬉しくて僕らは笑った。
笑うなよ、と彼は顔を赤くして怒って、それを見て僕らはまた笑うのだった。


「なあ、名前は?」
「僕は不破雷蔵」
「私は鉢屋三郎」
「……区別つかんからモサ毛って呼んで良い?」


その、彼が言った言葉に僕は大笑いし、三郎は怒った。
だって彼ったら、真顔でそんなこと言うんだもの!



「おい、それじゃあ雷蔵がモサモサしてるみたいじゃないか!」
「鉢屋は違うの?」
「私は雷蔵に変装してるんだ!」
「変装?」


彼はきょとんとして、僕と三郎を見比べた。
そうしてゆっくり手を伸ばしたかと思うと




「うわあっ!!」



三郎の顔を掴もうとした。
全く警戒していなかった三郎は大声をあげて下がる。
こんな堂々と三郎の変装を暴こうとした人なんて久しぶりに見た。
失敗して少し残念そうにする彼と、本気で焦っている三郎を見て、僕はまた大笑いした。




それから、僕は彼を見るたびに話しかけた。
そして彼の持っている僕らとは違う何かに、僕は惹かれていった。









「よ、モサ毛」



たまに冗談で僕のことをそう呼ぶ彼が、たまらなく好き。



不破雷蔵の場合






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