名前が帰ってこなかった。影時間を明けても帰って来なかったので、みんな心配していたが、自分が起きているからと言って休ませた。きっと、朝になれば帰ってくる。そう自分に言い聞かせて寝ないで待っていた。徹夜には慣れていた。朝になっても帰って来なかったから、昼には帰ってくると、また言い聞かせて待っていた。帰って来なかった。


「ねえ、いくらなんでも遅くない?」
「…もう、7時になりますね」
「私、捜してきます!」


 山岸がそう出て行ったのにつられて、皆不安だったのか、捜しに行くと出て行ってしまった。
 寮に残ったのは自分一人。アイギスが居たならば、アイギスは残ってくれていただろう。僕は捜しに行かなくていいのだろうか。いや、わかっているのだ。名前が見つからないってことが。



「…順平」


 先程出て行ったばかりなのに順平は戻ってきた。順平は何も言わずに僕の隣に腰掛ける。

「お前さ、捜す気無いだろ」
「……うん」
「俺っちも、無い」

 飲むだろ?と炭酸飲料の缶を手渡してきた。そういえば名前は炭酸が苦手だったなあ。もしかして順平はこれを買うために外に出たのだろうか。


「名前は綾時と一緒なんだろうな。お前もそう思ってんだろ?」
「……」
「yesと取るぜ。あいつら、ずっと一緒に居たから何かあんじゃないのかって疑ってた。あったけど。複雑な気分だなぁ…」
「……見つかれば、何も無かったことになるって思ってる」


 そう、ここで見つかれば名前は望月と一緒に居ない。つまり望月は名前を受け入れなかった。その事実が欲しかったから山岸たちを止めなかった。



「でも、見つかる気が全くしなかった」







ただいま


 山岸たちが揃って帰ってきた。全員が視線を落としていた。その表情を見て、やっぱりかとさほど落胆はしなかった。



「…苗字は、私の方から休学届を出しておこう」


 桐条先輩がいくつか低くした声でそう言った。お願いします、と僕が答えると山岸が泣き出した。
 その時、何かを感じた僕は寮を飛び出した。


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