「え、なに、なにがあったの」
「あのチドリって子が病院から抜け出したの!!」


急いで!、と急かす岳羽はもう怒鳴っていた。なんで怒鳴ってるかって、その問題のシーンに俺は寝ていたからである。うん、申し訳ない。
どうやら山岸の通信を乗っ取ったとかなんとか…すごいな。

「名前くん、準備はいいの!?」
「はいぃっ!」


…岳羽怖い。
バタバタとみんな寮を出ていく。順平は先に行ってしまった。そりゃそうだよな、順平にとってチドリは特別な存在なんだもんな。自分には、そうやってすぐに飛び出せる人がいるんだろうか、なんて考える。うーん…。

「名前」
「湊」

走りながら湊が話しかけてきた。息切れなんて知らないとでも言うような涼しい顔である。

「今日の体調は」
「眠たい」
「じゃ、大丈夫だね。戦うよ」
「ええっ!なんだよそれ、ていうか戦うって…」
「多分、そうなる」


なんだそれ。
湊はスピードを落として他のメンバーのところへ向かった。おそらく同じように体調を聞くんだろう。
戦うって、チドリとだろうな。
何度か病院に行って、順平と話している姿を見てるから戦いにくい。できることなら戦わずに終わりたいけど。




「名前くん…」




「…あや?」


突然、あやに呼ばれた気がして振り返る。でもそこにあやがいるはずは無い。だって今は影時間。普通の人間は活動していない。

「名前、置いてくぞー」
「俺が戦わなくていいのなら」
「こらこら」


気のせいだ。それより今は走らなければ。あーもう、影時間はモノレールが走ってないから大変だ!!








戦士の涙



チドリの最後の声と順平の叫び声に胸が痛くなった。何がいけなかったんだろう、とただただ考える。
ストレガの二人を睨もうにも彼らの姿はもう無くて、どこにも目をやることができなくておもいっきり目をつぶった。

「…あや……」

ふと、あやに会いたくなった。



2010.07.04

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