やだ、いかないで。 そう言えれば、どれだけ楽なんだろう。 今日も名前は望月と出て行った。望月が転校してから名前はずっと望月といる。もういい加減距離を置けば良いのに。変わらずべったりなのだ。 もうわけわかんない。色々なことがいっぺんに来て頭が追い付かない。 「湊」 「…名前っ」 名前はひょこっと顔だけを開いていたドアから覗かせた。突然でびっくりした。望月の姿は見えない。 「夕飯さ、牛丼で良い?」 「あ…うん」 「7時までにさ、買って帰るから。待ってて」 「…6時半」 「まじかよ。わかった」 じゃあな、と手を振って名前は視界からいなくなった。 名前と望月の声と足音がだんだん遠くなっていく。笑い声、名前を呼び合う声、全部が嫌になる。耳をふさぎたくなる。 「…っ、」 悪いけど順平のことなんか考えられない。 こんな辛くて、辛くて…。 涙を堪える右手 名前が僕を見ることがあるのだろうか。 2010.07.25 |