名前がゲーセンに誘ってくれたときは何があったのかと思った。もしかしてコミュ発生? 望月が転入してきてからしばらく遊んでなかったのでまあ嬉しかった。ほっといたら寄り道ばっかりしそうな名前を引っ張ってゲーセンに入った。そして色んなゲームをやった、けど。 「名前下手」 「うっせ!」 望月としょっちゅう通ってるから上手いのかと思ったら全然上手くない。カーレースも駄目、格ゲーも駄目、シューティングも音ゲーも駄目。どうしてそんな。 「ひとつくらい得意なもの無いの?」 「あるよ!」 くそ、見てろ! そう言って名前は両替して小銭を作った。そして向かった先は…UFOキャッチャー? 「狙ったもの全部取れるわけじゃないけどさ、これだけはあやも認めてくれたんだ」 うろついてどれが取れるかと見定めをする。そして選んだのはフロスト人形…いや、大きすぎるんじゃないか? お金を入れる名前。え、本当にこれやるの? 「金をどぶに捨てるようなもんだよ、やめなさい」 「まあまあ、見てなさいって」 俺は勝てない勝負はしないんだ、なんて言いながらもう一枚100円を投入。いや無理だって、やめなさい。しばらく様子を見ていたけど取れる気配は無くて、トイレ行ってくると言ってその場を離れた。見てるこっちが疲れる。 トイレ行ったら絶好調になった。やった。 「あ、湊!」 名前のところへ戻ると、それはそれは嬉しそうな顔。もしかして、と思ったら何かを投げ渡された。…フロスト人形。 「……取ったの」 「勝てない勝負はしないって言ったろ?」 自慢げに嬉しそうに笑う名前。見直しただろ?とでも言いたさそうだった。フロスト人形は大きくて柔らかい。 「それ、湊にやる」 「…え」 「ゲーセン前のヤツでしょっちゅう頑張ってたじゃん。欲しかったんだろ?」 いつ見てたんだよ。少し恥ずかしい。 きっとこれを貰えば名前はまた嬉しそうに笑ってくれるはず。名前が笑うのを見るの、何よりも好きなんだ。 「……ありがとう」 「おう!」 大好きな君 これでフロスト人形は3つになったからエリザベスに渡すことができるけど、やめよう。何か、これをエリザベスに渡すのは嫌だ。 「な、湊」 「なに」 「湊って笑うと可愛いのな」 「……可愛くない」 2010.01.05 |