随分と沈黙が続いた。
いったい何を話せば良いのか、話題が見つからない。
というか、コイツは口がきけるんだろうか。
俺はまだコイツの声を聞いてない。




「……えと、苗字?」

名前を呼ぶと俯いていたコイツは顔を上げた。
そして俺を見て、首を傾げた。
ああちょっと待った、まだ話題が…。
こういうときはとりあえず自己紹介みたいなことを話しておくのが無難だろうな。



「俺さ、野球やってんだ。」
「…ベースボール?」
「(お、喋った。でも…)そう。苗字は何かスポーツやったりすんの?」


苗字は頷いて、またベースボールと答えた。
あ、だったら野球部誘おうかな。
また、沈黙が始まった。
どうも俺は話題を探すのが下手らしい。
苗字も何か聞きたいこととか、あるんじゃないだろうか。
遠慮しないで聞いてくれれば良いものの。



「何か聞きたいことある?」


そう聞くとしばらく考えたようなポーズをして、首を横に振った。
恐らくほとんどおふくろから聞いたんだろう。
喉が渇いたから水でも持ってこようかと立ち上がったとき、
あ、と小さな声が聞こえた。


「?」
「な、まえ」
「名前?」
「で呼んで、ほしい」



なんだコイツ、ちゃんと喋れんじゃん。
まあ、少したどたどしいが。

「じゃあ俺も孝介で良いよ、名前」
「孝介」





はじめまして

(そーだ孝介、言い忘れてた。名前くん外国帰りで日本語練習中だから)
(そえいうのは早く言えよ!)



2009.06.09

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