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||| カオスブレイカー・ドラゴン

第二次星輝大戦後



戦争は終結した。兵器として扱われていた反転者、ブラスタージョーカーは彼の星の手へ戻り、フォトンは其れに歓喜の声をあげるように戦場へ赴き。我が上官は最期の瞬間、私へと笑みを見せ、星の者の手によって破壊された。数多の兵士を土へと還して第二次星輝大戦は、我々の敗北で幕を降ろしたのだ。
戦争とはそういうもの。両者が戦力を削り合い、どちらが勝っても凄惨な土地が待っている事に変わりはない。
命を削り合い侵略するのが我々先兵である星輝兵のつとめ。特に、自分が複数いるような量産型サイバロイドである私が戦争を嘆くことなど──間違っている事くらい、分かっているのだ。

「実に良い感情だ、まるで人類のようなその感情の豊かさは賞賛に値する」
「あ、ありがとう、ございます」

なのに何故、私は上官と一対一で会話をしているのだろう。全体メンテナンスを終え、擬似感情機能の発達が顕著であると指摘された直後にその機能の作者に声を掛けられる。こんな偶然はあるのだろうか。
カオスブレイカー・ドラゴン──私の直接の上司であったイマジナリープレーン・ドラゴン様の友人、理解者……だった筈だ。イマジナリー様から何度かお話は聞いていたけれど、実際には話どころか接触自体これが初めてだ。それなのに彼は、私のことを知っているように話す。もしもイマジナリー様が、私のことをご友人に話してくれていたのだとしたら、部下としてはこれ程幸せな事もない。
……けれど、相手は道化とも呼ばれる竜だ。他者のことを探るなど造作もない。つまりこれは、罠。未だにイマジナリー様の姿を探している私への罰か何かなのだろう。
現在は残存兵をまとめ上げ実質的な主として全体の統括をしている彼が、業務的な指令をわざわざ個々人に直接対話形式で与えるはずがない。

「……何か、御用でしょうか?」
「自身の研究結果を観察するのは何か問題かね?特に、目に見えて成果を出す個体だ。研究者としてこれ程の悦びもあるまい」
「いえ、その……私は研究者ではない一介の兵士のため、分かりかねますが……上官殿が楽しいのであれば、何より、です」

なんと言葉を返せば安全にやり過ごせるのか。どう対応すればいいのか分からない相手に、思わず表情が歪む。
この基地に属する兵士の大半は、サイバロイドという作られた存在だ。擬似感情機能を搭載している個体も今となっては少なくないが、あくまで我々は他生命の真似事をしているだけ。ヒューマンを模して作られた此れは所詮偽物。本物と並べられればその差はよく分かるだろう。



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