SunSet


見て欲しいと願ったのはごく最近のこと。やっぱり見て欲しくないと思ったのは昨日のこと。
クラスメートの、しかも同性に"俺のこと見て"アピールなんかされたらあいつが可哀想だと自己嫌悪。




「柳〜」
「何だ」
「柳はさ、俺のこと何でも知ってるの?」
「データにあることだけならな」
「じゃあ俺の好きな人は?」
「……」

何てことない夕暮れの帰り道。柳は相変わらずの無表情だが少し視線(あまり開いてないから分からないけれど)を落とす。この反応はまさしく"知っている"反応だ。どっから漏れたのかな、やはり確率の問題だろうか。何にせよ俺を複雑と思っているのは間違いない。
俺より身長の高い柳越しに落ち掛ける夕暮れを見た。街にゆらゆら溶けてく日はまるで俺の心情の鏡だと柄にもなく思った。

「あー…のさ、返事はしなくていいよ。寧ろ要らない」
「…名前、」
「ごめん、俺行くわ」

そういって早々と柳に背を向ける。呼び止める声もしないことに無性に悲しくなった。叶わない恋はあるさ。ありふれた恋の中にそっと潜んでる。返事は要らない。俺を優しく振ってくれる言葉なんて要らないから。

帰る頃には日は完全に落ちていた。ただいまと夕飯は要らないことを母に告げると電気も付けずベッドで横になり声も出さずに泣いた。この部屋が明るく日に照らされる頃には俺の心が浄化してればいい。




その日は柳を避けまくった。クラスでは一緒だから仕方ないが授業の時だけだし席も離れてる。休み時間は違う教室に非難。昼はもとより一緒に食べてない。(柳はレギュラー陣とだ)同じである部活は片やレギュラー片や平だし、俺との繋がりは帰り道だけだった。

帰りも勿論走って門を抜ける。ちょうど昨日俺が逃げ去った道の所で不意に呼び止められた。風の音で誰の声か分からず振り返る。もし分かっていたら、なんて。

「――っ名前!」

そこにいたのは柳だった。何でどうして、ハッピーエンドなんて期待しちゃうくらい柳は切羽詰まった顔だった。

「…や…柳」
「逃げずに、聞いて欲しい」
「…うん」
「こういう事は逃げと思われるかもしれない。だが近い内に必ず、答えを出す。だから待っていて欲しい。それまで俺を諦めないで欲しい」

そういって柳に抱き締められる。処理しきれない中俺は黙って泣いていた。大丈夫、例えどんな答えでも待てる。だってその時間は今までのように殺伐とした不毛な時間では無いのだから。


   
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