二角な三角
ボクの好きな人は厄介だ。
「日向クン!」
「なんだよ」
「今からお散歩しようよ!」
と彼の腕を掴むところまでは良い。しかしその後が厄介なのだ。
「ちょっ…狛え……離して下さい」
きた。瞬間ボクの手は思いっきり払いのけられる。
ボクが日向クンに接すると必ずでてくる"彼"。最初こそ作られたものではあるが"希望"という形の彼を敬愛し溺愛し崇拝していたが日向クンへの想いを自覚したと同時に気づいてしまった。
カムクライズルもまた、日向創を愛していると。
自己陶酔?自己愛?疑ったがどうやら日向クンとカムクラの精神は全く別の所にあるらしく、二重人格さながら記憶も共有していないらしい。しかし、カムクラは普段は身を日向クンに預けているが自分の意志で出てくることができる。日向クンには無理らしいが。
「なんで君が出てくるのさ。ボクが誘ったのは日向クンだよ」
「日向創に関わるなと言ったでしょう。君の被害を被ってしまいかねない」
答えるカムクラには普段のような無気力な感じはしない。それだけ日向クンに対し執着しているのだ。
「君のお得意の"ツマラナイ"と日向クンは別なんだね」
「まあ、拠り所ですからね」
「別にボクは日向クンに被害を与えるつもりはないよ。少なくとも命に関わる範囲でね」
「…」
「どうして?」
「?」
「身体は無事なのにどうして君はボクが日向クンに触れただけで出てくるのさ」
キッとカムクラを睨むと日向クンの顔でカムクラは静かに目を伏せ黙り込んだ。彼なりに考えているのか、はたまた、答えは決まっているが口に出さないだけなのか。
「答えてよ」
「じゃあ君はどうして日向創に関わるのですか?」
「好きだから」
「君の好きな『超高校級』はたんまりいますよ」
「日向クンが、特別だから」
真摯に、普段彼にあびるほど愛してると囁くボクでさえ緊張するくらいの告白。
それを聞くとカムクラはゆっくりと目を開いた。
「"特別"…ですか。………ツマラナイ。…まさに絶望的に」
さらにカムクラは言葉を重ねる。
「私には"日向創"しかいない。あなたと私の違いはそこですよ」
カムクラはそう答えるとゆっくり消えていった。"しか"と"特別"どちらがより強いのか。
「またあいつか…突然ごめんな狛枝」
意識を取り戻した日向クンにボクは、
「愛してる」
そう言うしか、彼に追いつくことは出来ないと思った。