嘘つきだらけの
キミとボクは似たもの同士で、反対で。
嘘つきだらけのこの世界でボクはキミにまた一つ嘘を重ねた。
「日向クンなんて大嫌いだ」
絶望病なんかじゃない。
あの時とは違う。ボク達はきちんと現実だ。腕がなかったりするけど、現実。
「俺は好きだよ」
何でも無さそうにそう答える日向クンにボクはムカムカしてくる。
少しくらい、悲しそうな顔をすれば良いじゃないか。
でもね、ボクがこうやって嘘を吐くのはキミがそうやって答えてくれるからなんだ。キミがそうやって答えてくれるから、ボクは傷つかずに、腐らずに済むんだ。
ボクがこのつまらない嘘で、どれだけ彼を傷つけているかも知らないで。
*
「日向クンなんて大嫌いだ」
そうやって言われる度俺は真反対の答えを返す。
"好き""好き""好き"
いつか俺みたいな"作り物"でも、狛枝が振り向いてくれると信じて。
でも無理そうだな。
明日からは、嘘を吐こう。傷つかないように。傷つけないように。彼に聞かれたら答えよう。精一杯の"嘘"を。
お前の眼に、映る俺は誰なんだ?
*
キミは誰にでも優しくて。悔しくて。寂しくて。
「日向クンなんて大嫌いだ」
今日も嘘をついた。
「…俺もだ」
ビクッと全身で反応した。それはボクの言葉に同意したと言うことで。
日向クンを見るとまた何でも無いような顔。
「…んで、」
「俺も嫌い…だ…って、なんで泣いてるんだよ!」
日向クンが驚いた顔をしてオロオロし始めた。ボクは言われたとおり自分の頬を触るとぬるりとした感触。嗚呼泣いてる。
「だって…だって日向クンが、嫌いって」
「!そっそれは、おっ…お前が俺を嫌いって…!!」
日向クンは怒りを滲ませ低く呻いた。
そして日向クンの眼からも涙が流れていた。
そしてボクは気づいた。とんでも無いことをしてしまっていたと。
「日向クン、ボクっは…」
"好き" なんだ、嘘つきだらけのこの世界で、ボクはキミにまた嘘を重ねてた。
でもね、ボクは
「好き、なんだ。好きなんだよ」
「俺もっ、俺も!」
ボロボロと泣きながら二人で抱き合った。
ボクらは傷つけ傷つかないように、お互い嘘をついてたみたいで。
十中八九ボクの所為だけど、だからこそボクはキミを信じ、そしてこの嘘つきだらけの世界を壊したい。
嘘だらけだったボクから、キミへの罪滅ぼしだとおもうから。
君を幸せに、したいから。