偽り
※notコロシアイ;希望ヶ峰学園
俺と狛枝はつき合っている。
お互い性別は男だがそんなの気にしなかった。狛枝は物腰柔らかでフェミニスト。女子からも凄くモテる。が、それは表の顔だったのだと付き合ってから気づいた。
超高校級マニアの希望厨。
どうしてそんな彼がただの予備学科生の俺を好きになったのか、彼に聞いたら単なる"好きだったから"だそうだ。俺はその答えに少なからず不満だ。
遊んでいるだけじゃないのか。
最近それを確信してきた。今だってそうだった。
「日向クン先に帰ってて!ボクはちょっと用事があるから」
「…わかった」
悪びれもせず狛枝は去っていってしまった。付き合いはじめはあんなにも一緒に帰ろうと五月蠅かったのに。
そして何気なく立ち寄った図書館で俺は狛枝とあと名の知らない、何かの"超高校級"の人と楽しそうに談笑していた。
(やっぱり、)
涙も出ず、最早怒る気にもなれなかった。
それから他にも狛枝が俺を避け始め、確実に、着実に俺達は崩壊の一途を辿っていった。
『愛してるよ日向クン』
『…あっそ』
『あっは酷いなぁ!ボクが君を好きだなんて奇跡に近いけど、でもボクはどんな奇跡を愛することよりも日向クンを愛してると自負しているんだ』
その言葉は嘘だったのか。
一人、寮の帰り道でその言葉を心中で反芻する。
アイツにとって俺が好きなことが奇跡だった。しかし、今となってはその奇跡が当たり前になってしまって、彼の中ではその"奇跡"の興味が無くなったのだ。
つまりはアイツは俺が好きだったんじゃない。好きになるはずのない俺を好きになった"奇跡"を愛していたのだろう。
その考えにたどり着いたとき、無性に悲しくなって、泣きたくなった。今までどうして気づかなかったんだろう。アイツの超高校級と希望に対する想いは尋常じゃなかった。俺との関係もその延長線上にあったと言うことを。
広場の噴水の縁に座るとせき止めていた涙が溢れ出てきた。止めることは出来なくて、ただ静かに泣きじゃくった。
すると突然、視界が陰る。
「大丈夫かよ」
頭上から声がかかり上を見上げると確か狛枝とクラスメートの左右田がいた。
「泣いてんのかよ!!」
彼はごそごそと制服のポケットを漁ると一枚の布切れを出した。
「あー…オイル拭きだけど使ってないから」
差し出されたそれを受け取り、涙を拭いた。
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