俺たち本当は


「趣味悪いよ」

俺の決死の胸の内を明かした途端皆の反応はまずこれだ。
確かに俺でも、アイツはないなと思っていた。でも紆余曲折、言うなら絆されて、アイツのことが好きになってしまった。
閉ざされた南国空間で間違いが無いわけがない。まあその間違いに該当してしまったのが俺だ。

「日向クン!!今日も一緒に散歩しない?」

思いがけない、いやいつものお誘いに胸が高鳴る。コイツを変態呼ばわりなんて出来ないな。コイツを好きな俺はもっと変態だから。

(可愛いな…)
狛枝はかっこいいと言うより可愛いに近い。友達というのに慣れてないのか、俺の言う言葉に時折顔を赤らめるのがとてつもなく可愛い。

「狛枝はさっき左右田と何を話していたんだ?」

さっきコテージで左右田と狛枝が話しているのを見かけた。話に混ざりたかったがなんだか剣呑な雰囲気だったので立ち去ったのだ。
コイツが好きな俺としては気にならないわけ無い。

「ん?いや、大したことじゃないんだ」

俺に目線を合わせず言う狛枝に胸がムカムカしてきた。まあ俺が勝手に嫉妬してるだけだから、狛枝は悪くはないんだが。だとしても怒りの矛先は狛枝に向いてしまう。
「それがどうしたの日向クン」

「…いや、何でもないんだ。気にしないでくれ」

誠に勝手だと思うがやや口調がきつくなってしまった。それに気づいた狛枝があわあわと焦ったように俺の顔色を窺っている。あーくそ、可愛いな。

「日向クン、怒ってる?」

「別に…」

「本当に?」

「ああ」

「本当の本当に?」

「い―」

いい加減しつこいぞと自分を棚に上げて怒鳴ってしまいそうだったときそれを遮るように狛枝が言った。

「じゃあ僕からも質問良い?」

一瞬ポカンと思考が停止した。脈絡がないというか余りに急で何だよ、と答えてしまう。

「日向クンは僕と話した最後、昨日の夜からのこと何だけど、朝に罪木さんと十神クン、食後には小泉さん、コテージの帰り西園寺さん、さっきは七海さん。日向クンは何を話してたの?」

一息に言われ言葉の意味を理解するまでに数十秒かかった。

「えっ…と、…狛…枝?」

「それを教えてくれたら、さっきの質問に答えてあげる」

にこりと微笑む狛枝。…あーと言うことは。狛枝はずっと俺を見ていて。俺が自惚れてないんだとしたら、俺たちもしかして。
「それは質問に答えた後だよ」

こうして俺は必死に四時間説明することとなった。
   
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