消えない
R15
ピチャピチャとなる音に嫌気が指す。俺にはその音の出所が分かっているから何とも言えない。
「あっ…ふっ…狛っ…枝やめ…!」
「五月蠅いなぁ静かにしててよ」
つぅっと俺の胸を伝う狛枝の唾液が気持ち悪い。
第四回目の裁判が昨日終わり、俺たちは大事な仲間を失って、やっとコテージへ戻った。
今回ソニアはかなりキてるらしく食事以外はコテージから出てこなかった。
そして俺がどうしてこんな事態になっているのか。実のところ俺も理解していない。話があると狛枝が部屋を訪ねてきて入れた途端目隠しされ縛られた。
あいつにとって俺はもうその辺のゴミ同然であるからとうとう殺されるのかと恐怖したが違ったようだ。
首に顔を埋めねっとりと俺の首を舐めあげるこいつに殺されるとは違う恐怖を感じた。
「抱くよ、日向創クン」
俺には拒否権所か抵抗すら出来なかった。
行為は痛いの何のって痛みしかなかった。その中で時折快楽を感じなくもなかったがそれも痛みに埋もれた。
「って…」
腰の鈍痛が広がる。今は縛られていないが動けないにも程がある。
「して…」
うっすらとベッドサイドで服を着ている狛枝が呟く。
「どうしてボクを失望させてくれないの…?」
「は?」
「どうして、どうしてどうしてどうして」
「こっ、狛枝?」
「どうして、どうして君だけは―…」
終いにはボロボロ泣き出す狛枝に俺は今までされたことを忘れ、動かない身体に鞭打って狛枝の元まで寄る。
「…狛枝?」
「頼むから、君に絶望も希望も持ちたくない、失望したいんだ」
何も君に感じたくない、そう言ってわんわん泣き出す狛枝をそっと覆うように抱きしめる。
愛だの恋だの憎しみだのそんなのすっ飛ばしてしまった俺らの行為に意味はない。ただ、これは俺と狛枝を結ぶ確かな絆であり縁であり、例え狛枝が俺になにも感じなくても消えない繋がりであることに俺は何となく嬉しく感じた。俺は変態なのかもしれない。ただ、狛枝みたいな奴と繋がって、嬉しく愛おしく感じたのも事実だった。
「ボクは君が、ただの予備学科生である君に、」
落ち着き始めた狛枝がと呟く。
「とてつもなく、執着していたんだ」
虚ろに話す狛枝に肯定も否定もあの字も出なかったがただ黙って横にいた。
それと同時に再び泣き出した狛枝から目を背ける。
これから起こるであろう惨劇を俺は見て見ぬ振りをした。
改正 *9/6*