>>ささやかな愛を込めて(title 楯)



 グウェンダルはいつも眉間にしわを寄せていて、無愛想だとか無口。あとは強面だと言われることが多いけれど、それは彼のことをよく知らないひとたちが言うだけで、城内に勤める者の多くはちゃんとわかっている。
 グウェンダルが『可愛いものが好き』で『お菓子作りが得意で趣味は編みぐるみ』だっていう、出回っている印象とはまったく反対のひとだということを。
 でも、そう理解をしているひとたちにも知られていない彼の秘密を私は知っている。
 私だけが、知っていることがひとつあるの。
 私は血盟城に遊びに行くたび、必ずと言っていいほどグウェンダルとふたりきりで過ごす一日がある。お父様たちはいつでも遊びにおいでというけれど、お父様たちはとても忙しい。その合間を縫って私と遊んでくれる。遊びに行く日は前もって連絡するけど、それでも忙しいものは忙しい。だって、お父様たちは国を守る仕事をしているのだから。
 まだ、私が家族で過ごしていたとき、王や側近の臣下がどれほどたいへんな仕事を担っているのか知っているからわがままなんて言えない。大事な仕事を放ってまで構ってほしいとも私自身考えていない。だから、無理に私のためにお仕事を休むのはやめてと以前お願いしたのだ。
 それからはこうして、お父様が仕事のときはグウェンダルが私を構ってくれる。
 グウェンダルと遊ぶときはお菓子作りそれから編みぐるみを作り、教わって完成したそれらはお父様たちやコンラートなど日ごろお世話になっているひとたちへ感謝の気持ちとして贈るのだけれど、みんなは知らない。
「ユーリは青が好きだからこの糸を使うといい」
「ヴォルフラムはバラのジャムがお気に入りらしい」
「コンラートは甘さを控えた菓子を好む」
 と、だれかに贈り物をすると言えばかならずグウェンダルが助言してくれることを。
 貰ったひとたちは贈り物を手にして「よくわかったね」と感謝の気持ちをうれしそうに笑ってくれる。そうして喜んでもらえるたびこっちも心があったかくなるけど、言われるたびに「これはね、グウェンダルが教えてくれたんだよ」と言ってしまいたくなる。でも言わないはグウェンダルがそれをきっと望んでいないから。
 グウェンダルは恥ずかしがり屋さんだから言えばつぎに教えてもらうときはもういまのように助言してくれなるかもしれない。なにより、あれは彼が無意識で言っているのを私は知っているの。
 だから私は言わない。グウェンダルが助言してくれるのは私だけの秘密。
 でもね、これは私のわがままだけどいつかみんなにも知ってほしい。グウェンダルは口数が少なくて愛想がないように振舞っているけれど、いつだってみんなのことをみていて、心配してくれていること。指先が器用で料理がうまいだけじゃない、とっても心やさしいひとだってことを。
 私はそうしてみんなへの感謝の気持ちとグウェンダルのやさしさがこっそりとはいった贈り物をグウェンダルとふたりでつくる。
 あ、もうひとつ秘密があった。
 グウェンダルにね、みんなが喜んでくれたよって言うと眉間のしわが一本減るんだ。そのかわりに目尻に皺が増えるのよ。グウェンダルがやさしく微笑むから。これは私とグウェンダルだけの秘密なの。
 



END


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テーマ「人外ファンタジー」
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