星を産んだ魔女の話 | ナノ

星を産んだ魔女の話
title azalea


 みんな、私のことを『魔女』と呼ぶ。
 実際、魔力はあるからその呼び名が間違いだとは思わない。けれど、その『魔女』という呼び名が愛称ではない皮肉を込めたものだということぐらい知っている。
 私は三人の男と恋におちて、子を産んだわ。どの恋も本気だったし、いまでも彼らを愛している。
 しかしそれを理解してくれるひとなんてそうそういないのでしょうね。
 多くの者の目には私が娼婦のように見えていることでしょう。
 でもね、私は私の考えを説明してまで、理解してほしいとは思わないの。理解してくれるひとがいることを知っているから。それだけで私は充分なのよ。
 私をどうとでも思えばいい。言えばいい。
 人間と恋におちた自分が間違えなんて思わないし、恥ずかしいとも思わないわ。
 人間は魔族よりも劣る種族だと古臭い考えに縛られて、一度しかないこの人生を好きに歩めないなんておかしいもの。
 あのひとを愛して、子を産んだ私はとってもしあわせなだと思う。
 だけどそれと同時にこの子の未来はだれより過酷なものだろうとも容易に想像できる。
 魔族と人間のあいだに生まれた者をひとは混血と呼び、差別し避難する。敵対してあるべき種族がこともあろうに特別な感情を持ち合わせ、子を授かるなど言語道断なはなしで、本来であれば隠さなければならないこと。
 でも私は、この国の王でありなによりこの子だけを隠し子になんてしたくない。大衆の冷たい視線に日々拷問のように耐え、生きていかなければならない。
 それを思うと、この子には申し訳ないと思う。
 けれど、魔女と呼ばれる私の子ですもの。私に似てしたたかな性格をしていると思うわ。
 それにね、変わらないものなんてなにひとつないのよ。世界は変わる。こんなおかしい世界ならなおさらのこと。
 だってみてよ、この子の瞳には茶色の瞳のなかに銀の星が散っているの! とてもきれいでしょう?
 それにきれいだけじゃないの。私にはわかる。この子は父親に似て勇敢でやさしい子になるの。
 私の自慢の息子。コンラート。
 私は『魔女』でよかったと胸を張っていえる。
 古びた風習に縛られたあなたたちには星なんて産みだすなんて到底無理なことですものね。 






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