十一月十一日
眞魔国は日本とちがってイベントの数が少ない。イベント=カップルの日みたいなものがあるし、おれには関係のないことだと思っていたが、どういうわけだが村田の(面白半分)策略によってバレンタインやホワイトデー。ハロウィンにクリスマスとこの国にも日本のイベントが普及されてきている。
そして今日十一月月十一日日も恋人たちが長い棒状の菓子を両端から食して接吻するとより一層愛が深まるとして伝えられているらしい。とは言っても、村田が広めたばかりなのか城内の人にしか知られていないけれど。
だが、執務休憩はポッキーに似た菓子が出されるし、ギュンターやヴォルフは口に菓子を咥えて待っていたり追いかけてきたりと、散々な一日だった。きっとコンラッドの耳にも届いているとは思うが彼はまったくそういう素振りも見せなかったので、興味がないのかもしれない。
休憩中はギュンターやヴォルフが怖くて食べられなかったので、おれはコンラッドにお願いをして夜、ひっそりとコンラッドの部屋を訪れ、取っておいてもらった菓子を食べていた。が、やはり彼は気にしないようだ。まあ自分も恥ずかしくてやる気などなかったし、最後のひとつを口のなかへ入れるとコンラッドが「残念」と肩をすくめた。
「あなたからゲームに誘ってもらえると思っていたのに」
「は? なにポッキーゲーム? しないよそんなもん」
言ったあとで彼がわずかに寂しそうな顔をしたのでおれは恥ずかしくも「そんなのしなくてもおれたちの仲はおかしくないだろ」と言いフォローをするとコンラッドは笑い「それもそうですね」と答えた。
やっぱりコンラッドは大人だと、感心していると、コンラッドが席から立ちあがりなんの前触れもなくキスをしてきた。
「……んっ!」
舌の絡む深いキスを。びっくりしてろくな反撃も出来ずいるとそのうちに口唇を離され「それに両端から食べるということは最終的にこうなるということで。俺達の仲も安泰ということで良しとしましょう」と彼はにっこりといたずらに成功した子どものように無邪気に笑った。
…本当にこの男恥ずかしい。
(でも、ほんのちょっとだけやりたかったって言うのは絶対に秘密だ)
END
2013/11/11 ガチでコンユでポッキーゲームすると恥ずかしさのあまりにユーリがポッキー折ってしまうような気がします。