僕の親友である、渋谷有利は今世紀絶滅危惧種と思われる、きらきらと輝く黒髪と大きな瞳。性格はまっすぐでやんちゃでひと思い、正義感にあふれていてひとを疑うことを知らない――純粋培養少年だ。
 本人は、自分のことをなにかとあるとどこにでもいる平凡な男子高校生だというが、それは彼だけが思っていることで、渋谷には優れたカリスマ性がある。じゃなきゃ、この僕がこんなにも大切になんかしない。渋谷のためだったら、なんでもやってやるなんて思ったりしなんだから。
 学園のプリンスと称される英語教師コンラート・ウェラーの心を射止めた渋谷は、現在あほみたいにらぶらぶな恋人生活を送っている。
 時折、ファストフード店で悩み相談を受けているけど、聞くものすべて『それ、悩みっていうか惚気だと思うだけど』って思うようなことばかり。「ウェラー先生はいつでも完璧だからおれのようなお子様が恋人でいやにならないのか」と愚痴をこぼすこともある。渋谷が傷つくから言わないけど、渋谷の恋人であるウェラー先生は甘いマスクと優しいプリンスと言われているが彼の裏の顔は「夜の帝王」と呼ばれるほど手練で面倒だからと恋人というものを作ったことがないらしい。(某オレンジ頭の教師がそう言ってたから間違いない。だってあのオレンジ頭はぼくの奴隷だからね)
 そんな気持ちも下半身もゆるいあの先生が、必死になって落としたのだ。いつでも完璧っていうのは、渋谷に嫌われたくないからだと思う。きっと、先生の心のなかは九割が渋谷のことでいっぱいで好きすぎて、不安になっているんだろう。
 でも、その完璧な振りをし過ぎて渋谷が不安になっているのは、渋谷がすこし可哀想だ。渋谷はもっと、自分に自信を持ってほしい。
 渋谷はまっすぐでいい子だから(悪く言えば、一直線バカ)先生がなんでもリードされることを良しとしない。だから、デートで食事代とかを全額出してもらうことを負い目を感じでいるらしい。……僕だったら喜ぶけど。
 さて、そんな渋谷の惚気お悩み相談をどう解決してあげるべきか考えていたとき、渋谷のクラスの武田くんがいいものをくれた。カラオケのチケットだ。先生がカラオケに誘うことなんてきっとないと思う。カラオケに行くくらいだったら、某ネズミの国に渋谷を連れていったり、豪華ディナーへ誘うという思考を持ち合わせていそうだ。
 半額チケットなら渋谷の金銭的負担も減るし、本当に武田くんはいいものを持ってきてくれた。
 元より僕はカラオケに行くのが苦手だから、渋谷にチケットを渡し、デートに行くことを提案すると渋谷は煮え切らない表情をみせていたが、武田くんと岡田くんに後押しされてついに誘うことにしたみたいだ。
 まあ、渋谷に夢中な先生だったら公園デートだって喜びそうだけど。
 あとは、僕が渋谷たちのデートを邪魔されないようにサポートするだけ。武田くんと岡田くんがそんなことをするとは思わないけど、一応のためとチケットをくれたお礼として合コンに誘う。
 恋人がほしいふたりはすぐに合コンのはなしに乗ってくれた。K女の子に連絡を入れるというめいもくで渋谷にこっそりとメールを送る。
 すると、渋谷が照れくさそうにぼくを見て笑う。
 本当にさ、きみたちは心配いらないくらいバカップルだと僕は思うけど、こんなかわいい笑顔を向けられたらなんでもしてあげたいって思ってしまうんだ。
 渋谷はずるいよ、まったく。


せいぜいしあわせになるといいよ

(願わくは、彼らにとってしあわせな一日となりますように!)





thank you:食用






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -