びっくりした。まさか、完璧な先生が不安になっていたなんて。しかもおれのことで。だってそうだろう。学園一モテる教師と謳われる先生がこんな子供相手になんてさ。
『別れ話を切り出されるかと思った』
 と、言った先生の顔は大人に向かって使う表現じゃないけど、すごく可愛かった。なんていうかわんこ、みたいな。
 先生――コンラッドが、おれのことを好きでいてくれるのはわかってる。じゃなかったら付き合ってなんかいないから。でも、それでも、こんな格好いいひとが平凡ということばが似合うおれのことをおれが思う「好き」と同じくらい想ってくれているのかと考えたらいつも不安になる。
 武田や岡田、それから村田のことばに半ば流されるように今日の放課後、デートのお誘いをしようと悶悶してて、コンラッドの車に乗りながら何度もため息をついてる姿を横目でみたとき、やっぱりおれじゃ釣り合わないのかなってすこしだけ悲しくなった。
 でも、勇気を出して誘ったときそのため息の意味がわかって心配をかけたコンラッドには悪いけど、とても胸が熱くなってしまった。
 ちゃんと、コンラッドもおれのことが好きなんだ。
 うれしくてうれしくてどうしようもなくて。
 ぎゅっとコンラッドがおれを抱きしめて温もりと感触は数時間経っていまはもうベッドのなかだというのに、まだリアルに残ってる。それと甘いコロンの香りも。
 勉強ひとつ覚えるのに時間をかなり掛けるっていうのに、こういうことだけはすぐに覚えている自分はすごく恥ずかしいと思う。目をつぶると、以前彼の家でキスをしたことやケーキをあーんと食べさせあったことまで思い出してしまい、心臓が早くなる。
 おれ、乙女思考すぎるぞ。
 自分を窘めてみるも、瞼の裏に浮かぶお家デートのこともさきほどのこともまったく消えない。それどころか、コンラッドのことを想うともっと欲が出てくる。
 胸のまえでおれは両手を組んで、日曜日のデートが晴れることと、もうひとつ願い事を心のなかで呟いた。
 どうか、コンラッドといま以上の恋人な関係になれますように。って。






願い事をかけました

(たとえば触れるだけじゃないキスとか。)

thank you:tiny





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