下に泣かされる日


 大好きな小さくて可愛い黒猫は嬉しいことに俺が一番好きだと言ってくれる。勿論、俺も黒猫子猫が一番好きだ。
 二人はいつも一緒。

* * *

 息も白い冷えた外をこつこつ早足にあるく。仕事でどんなに疲れていようが立ち止まり、酒を煽ろうと思うことは決してない。何故なら、家には暖房よりも俺を温かく包んでくれる子猫がいるのだ。
 ガチャリと開ければ、ほら。
「おかえりなさいー!」
 ふにふにと走ってくる子猫が。俺は体を屈め、両手を広げて黒猫子猫を待てば、程なくして心地いい勢いのある抱擁をされた。
「ただいま」と、子猫を抱っこしてリビングへと向かう。どこまでも幸せな生活。これからもずっと一緒に……
「わたしがおとーなーになあーったらあー、あーなたはあーおじさんーよっ!」

年下に泣かされる日

「……」
「あたらしーうたーおぼえたにょよー! ゆーちゃ、おうたじょーず……う、あ、あ!こんらっど、おめめうるうるしてるよ? あううー! なかないでえー」
 分かってる、分かってるけど聞きたくなかったよ。
「こんらっどーこんらっどー?」
 子猫があたふたと体を揺らして俺の頭を撫でる。ああ、衝撃的なことを言われたけど可愛い。
「ユーリがちゅーしてくれたら、泣かない」
 ……まあ、おじさんになったって、君を離したりはしないけど。

END