■ 21

「おそくなってしまい、すみませんでした。……吉田先生ご注文は?」
「今日もオムライスをお願いするよ。それから、ユウコちゃんを指定できないかな」
 テーブルで指を組みながら吉田さんが言う。
「……すみません。今日はすでにこのあと先約がありますので、吉田先生のテーブルには座れません」
 すでに用意していた返答を返すとぴくり、と吉田さんの片眉がつり上がり「それってだれ?」とわずかに声のトーンが低くなった。
「望月さんかな。それとも榊さん?」
 どうやら吉田さんは常連ということもあってか、おおよそ来客しているひとの名前を覚えているらしい。しかもしれが、おれがいる時間帯の常連さんの名ばかり。おれはすこしだけ吉田さんに恐怖を覚えた。
「それは……」
「さいきんはよくユウコちゃんの噂を聞くから。……くやしいなあ。ぼくが最初に目をつけたっていうのに。わかっていたけどほかの常連さんに指名されるって聞くと焼いちゃうよ」
 はやくポイントを稼がないとだめだね。と、吉田さんはうすく笑った。
「あ、あの、とりあえず。注文していただいたオムライスを厨房に連絡しておきますね。……それと、吉田先生の席には座れませんが私も先生にお伝えしたいことがありますから、またあとで」
 言うと、わずかに吉田さんの表情が明るさを取り戻す。
「わかったよ、待ってるから。はやくおいでね」
 しかし、おれがはなしたいという内容は吉田さんへの告白にお断りをするということだ。さきほどの声のトーンや表情をみたあとでは、気持ちが萎縮してしまいそうになる。
 ……どうか穏便にことが運びますように、とおれは願いながら厨房へと向かったのだった。


 オーダーを報告すると、宮本さんはやはりおれのことを心配してくれているようで何度も「もし、吉田さんにヘンなことをされたらすぐに席をはずして厨房に逃げてくるんだよ」と言い、オムライスを手早く仕上げるとおれに手渡してくれた。
 なにもないとは思うものの、吉田さんの態度をみたあとでは返答に濁ってしまったが、このまま逃げまわっていてもここで仕事をするかぎり繰り返してしまうだけだ。
「――お待たせいたしました。特製オムライスです」
「ありがとう」
 作りたてのオムライスを吉田さんのまえに置く。
「今日はなにを書きましょうか?」
「うーん……まだ考えているから、さきにユウコちゃんがぼくにはなしたことを教えてくれないかな」
 すぐに終わるはなしなんでしょう。ちょっとそこに座ってさ。
 なんとなくだが、イスに腰をおろさないと終わらないような気がしておれは、ためらないながらも「ちょっとだけですよ」とイスに座る。
「で、はなしっていうのは連絡くれなかったこと?」
 腰をかけたとたん単刀直入に吉田さんに問われ、おれはからだをふるわせた。
「やっぱりそうなんだ。ぼくも聞きたかったんだよね。なんでくれなかったのかなって」
「あ、の……すみません。あたしは吉田さんの気持ちには答えられません。だから、連絡しませんでした」
 ちょっと勇気がたらなかったけど、きっぱりとおれは言いきった。いつのまにか伏せていた目でスカートのうえに置いた手がガッツポーズをしている。
 吉田さんは、これを聞いてまたさっきのような態度をするのだろうか。おれはゆっくりと顔をあげ、吉田さんに目を向ける。すると、拍子ぬけするくらいかわらない笑顔をこちらに向けていた。
「あー……やっぱりそっか。まあ、連絡が来なかった時点でそうかなって薄々感じてたけど、しかたないよね」
「はあ……」
 吉田さんの返答になんと答えていいのかわからず、生返事を返す。
 ……でも、よかった。怒ってはいないようだ。
「あのさ、ユウコちゃん。もうひとつ聞きたかったことがあるんだ」
 言って、吉田さんは右手の人差し指をこちらに向けた。
「ねえ、目が赤いのってどうしてなのかな。もしかして恋人とケンカでもしたの? 恋人がいたからぼくとはつき合えないってことであってる?」
「それは……」
言わないといけないことだろうか。返答を濁らすおれに吉田さんは宮本さん同様、察したように肩をすくめた。
「ぼくならユウコちゃんを泣かせないのに。でも、きみを泣かせるようなひとは、きみと縁がないんじゃないかな。ぼくならきみを泣かせたりしないよ? ……それに、男性を泣かせる女性なんてあまり良い印象をもてないなあ」
「いや! でも、そのひとはすごく尊敬できるひとだし、おれが勝手に」
「勝手に好きになっただけ? じゃあ、ユウコちゃんの片思いだったんだ」
「あ、」
 いまぜったいにおれ、余計なことをくちにすべらせた。おれのはなしにこえを重ねた吉田さんの微量に明るくなった声のトーンと笑顔に背筋が悪寒がはしったのがわかる。
 吉田さんも、恋愛経験が豊富なのだろう。ことさら笑みを深めて安堵の息を吐く。
「なーんだ。そっか」
 なにをいったい吉田さんは納得したのか、わからずとまどいに首を傾げると吉田さんは「オムライスにメッセージを書いてくれる?」と、やや立ちのぼる湯気がうすくなったオムライスを指さした。
「はい、なにを書きますか?」
 吉田さんがなににたいして納得したのか気になったが、聞いてまた余計にややこしくなるのは避けたい。それに一応、吉田さんには交際についてお断りをいれたし、しゃくぜんとしないがこれで一件落着ということにしよう。
 そう考えなおして席をたち、吉田さんのとなりへ移動すると彼が紡いだことばにおれは目を見張った。
「オムライスに『吉田さん大好き』って書いてくれる? ハート付きで」
 ケチャップをもったままかたまるおれの腰に吉田さんが手をまわして「はやく書いて」と急かす。
 よくオムライスで書くメッセージのひとつにお客さんの名前と一緒に『大好き』と書くことはよくあることだ。……でもいままでの経緯でこんなことをいうなんて。
 おれはきゅっと唇を噛みしめてオムライスにいわれたとおりのメッセージを書いた。
「ありがとう。ごめんね、長々と話しちゃって。もう行っていいよ。仕事、頑張って」
「……はい。それじゃあ、失礼します」
 いろいろと胸にひっかかるものを感じたけど、おれはこれ以上吉田さんと一緒にいたくなくて、すぐにテーブルをあとにした。

* * *

 ――あれから数日が経った。未だにウェラーさんへの想いは引きづっているものの、以前よりは気持ちの整理もついて、仕事のほうには影響もなくむしろ失恋したことで身に感情があり、ガヤよりわずかではあるが役も増えてきた。とはいってもはじめての主役がボーイズラブだったこともあり、BL関係のメインキャラクターに恋心を抱くも振られてしまう脇役ばかりだったりする。リアルでも振られ、二次元の世界でも振られるなんて……と、少々肩が下がってしまうがそれでもガヤ以外の役柄をもらえるようになったことはうれしい。
 また、ウェラーさんと吉田さん。ふたりは異なる職業ではあるが、どちらもエリート。月末になると忙しくなるのかふたりにあまり顔をあわせる機会がなくなったのが自分にとって都合がよく、落ち着いて仕事に専念できるひとつの理由になっているのかもしれない。
 おれは仕事を終えて電車に乗り込んむ。最近の仕事は午後のものが多く、今日も電車内は自分と同じく家路へ向かうひとで満員になっていた。都内を巡回する電車なので空いている席はひとつもなく、むしろ入れるかさえむずかしいほど窮屈な車内でおれはひとの隙間にむりやりからだを押し込んでスペースを確保する。
 そうして電車が動きだし、ようやく肩のちからを抜いて揺れに身を預けていたがそれもまたつかの間のことだった。
(……まただ。)
 おれは身をよじり、背後に顔をそらしてみるがあんまりにも満員でうしろさえまともに向けない。それを知って知らずかとある行動はエスカレートしてくる。
 つぎつぎと起こる災難におれはもしかしたら今年厄年だったんじゃないかと、自分を疑いたくなってしまう。
 いいことがあればわるいこともある。
 おれはいま、信じたくないが痴漢をされている。電車に乗る際は、痴漢に間違えられることがないよう、万が一のことを考えて同性のいる場所へと移動しているから、おそらくいまおれの尻を撫でまわしているのは男なのだと思う。
 最近、仕事が午後終わりになると高確率で尻をなで回されているのだ。
 一体、男の尻を撫でまわしてなにが楽しいんだろう。こういうとき、声をあげて「やめろ!」といえばいいんだろうけど、男が男に痴漢されているという事実を認めたくない自分の情けないプライドが邪魔をしていえずにおれは無言で降りる駅まで痴漢と格闘をする。
 いつもは身をよじったりするだけだが、毎回同じパターンしかできない奴だと相手は思っているかもしれない。おれはその心理を逆手にとって右手を後方へとのばし、尻を撫で続ける男の手を捕らえた。 
(よし! 捕まえた! おれだってやられるばかりじゃないんだぞっ)
 いきなり手を掴まれれば痴漢も驚いて無理やり手をひっこめるかもしれない。ほんとうはそのまま捕まえて、駅員さんに連行するのがいいとは思うがいまのおれにはそこまで考えが及ばなかったし、とりあえずいまはやめてさえくれればいいという気持ちが強くぎゅっと相手の手を握る。握った手は予想どおり、おれよりも大きく皮が固く男の手で嫌悪感をもよおしたけど、計画どおり相手は掴まれた手を離してほしいのか暴れる。
(これにこりて、もう二度とするなよ!)
 おれは心のなかでそう男に注意をしながら、手を離した。……が。
(え、え……っ!?)
 手を離してほっとしたのもつかの間。男はおれの予想をはるかに超えた行動にでてきた。なんとこんどは男がおれの手を掴んできた。しかも一方的に握っていたおれとは違いおれのてのひらに自分のてのひらをあわせて……あろうことか恋人つなぎ、というものをさせられてしまった。くわえて、堪能するようにはさんだ指を強弱をつけて触ってくる始末だ。気持ちがわるくてしかたがない。おれは躍起になって振りほどこうと握られた右手や腕を動かすととなりのひとにあたってしまったらしく、不機嫌そうに顔をしかめられた。
「す、すみません……っ」
 自分の腕があたってしまったのは、自分の責任だとわかっているが、もとを辿ればいまおれの手を握るこの痴漢野郎が悪い。おれは、まわりに気づかれないよう必死に握られる手をはずそうとするが、男の行動はますますエスカレートしてきた。
 手をつないだままうしろにひっぱりあろうことか股間にあててきたのだ。
(しかも勃ってるし……っ!)
 本気で痴漢している男はなにを考えているのだろう。気が遠くなりそうだ。焦りと嫌悪と恐怖が入り混じって手に汗がにじんできたが、やっぱり男ははなさなさい。むしろ男はおれの様子を楽しんでいるらしく、ちいさく喉奥で笑う声が聞こえた。
(もういやだ! はやく、はやく駅に着いてくれっ)
 さいわいにもつぎが自分が降りる駅。おれは、ぜったい近いうちに厄除けに行こうと心にかたく決め、拷問にも似た時間に耐えに耐えることにした。
 

「――ほんとに、まじで最悪だ」
 駅に着き、ドアが開いた瞬間に思いっきり手を振り回して痴漢の手から逃れると階段をかけおりてすぐさまトイレへと走った。もう、気持ちが悪いとかいうレベルを超えて吐き気をもようしたのだ。
 とくに間食もしていなかった腹のなかは、昼ごはんもほとんど消化していたようで、胃液しか出てこなかったけど、いくぶん体調は良くなった気がする。
 ……あんなことをされるくらいだったら、おとなしく尻を撫でられていたほうがよかったんじゃないかとあたまによぎったが、あの様子では遅かれ早かれおなじことだったかもしれない。
 とりあえず神頼みするまえに、車両と電車にのる時刻をかえようと軽く洗面台で顔を洗うとおれはトイレから出て改札を出たものの、まだ若干気持ちがわるく。駅内にあるコンビニエンスストアで飲み物を物色する。
 こういうときはお腹の調子を考えてスポーツ飲料にするかそれとも気分を爽快にさせるために炭酸にすべきか……。
 飲料コーナーのまえで悩んでいると「すみません」と声をかけられた。
「あ、すみません。邪魔ですよね! どう……あっ!」
 どうぞ、と言いたかったのに予期せぬひとと遭遇してしまっておもわず声をあげてしまった。
「あ、ユウコちゃんだったんだ。うしろ姿じゃわからなかったよ」
「よよよ吉田さんっ! なんでこんなところにっ」
「ぼくは帰宅途中に小腹が減ったから、コンビニに寄ったんだ。最近は忙しくなってなかなか喫茶店に行けないからね。ユウコちゃんも仕事帰りかな?」
「ええ、まあそうデス……」
『KATHAEN』以外で吉田さんに顔をあわせるとは思ってもみなかった。びっくりしてるおれとははんたいに吉田さんはおれを興味深そうに観察している。
「そんなまじまじ見ないでください」
 告白を断ったことと、オムライスに書いたメッセージの件があったから吉田さんにはわるいが会えなくてほっとしていたぶん、はやくここから立ち去りたくてたまらない。
 ……いやでも、もしかすると吉田さんがバイだからと言っても『KATHAEN』で会うときには女装をしているし、実際にこうして男の格好をしている自分をみてイメージがちがっていたと彼は戸惑っているのかもしれない。
 女装のときは薄くではあるが化粧をほどこしていたりするし。と、おれは思ったが、吉田さんはかなしくもおれの期待を裏切ってくれた。
「ああ、ごめん。女装をしていたときもかわいいけど、私服もかわいいなって思ってついみとれちゃったよ」
「……ソウデスカ」
 女の子が聞けば喜びそうなセリフだが、おれは正直幻滅してほしかった。
 さきほどの痴漢のこともあり心に余裕のないおれは、さっさとこの場から逃げてしまおうと、てきとうに選んだスポーツ飲料を手にとる。が、それを吉田さんに奪われてしまう。
「これ、ぼくが買ってあげる」
「え、いいですよ!」
 おれは言い、吉田さんにとられたペットボトルに手をのばすが、身長差があり彼の顔のまえまでそれを持ち上げられてしまうと奪いかえすことができなくなる。
「ユウコちゃんと『KATHAEN』以外で出会った記念日に奢らせてよ」
 それは記念日にはいるようなものなのか。と、思うが吉田さんはおれの制止を聞き入れることもせずにレジで会計をすませてしまい、結局奢られることとなってしまった。
「すみません、ありがとうございます」
「いえいえ、どういたしまして。と、いうかさっきから思ってたんだけど、顔色がわるいよ。ちょっと外のベンチでやすんだほうがいい」
 そう言い、吉田さんはやはりおれの有無もきかずに駅のそとへと歩きだしてしまった。
 飲み物を買ってもらった手前、おれはやむ終えず吉田さんのあとをついていく。
 ひとの目もあるし、へんなことはしないだろう。自分に言い聞かせて、ベンチに腰掛けた吉田さんのとなりへと座る。とは、いってもひとりぶんのスペースをあけて。
「はい、どうぞ」
「あ、ありがとうございマス」
 おそるおそる買ってもらったペットボトルを受け取ると吉田さんが苦笑いを浮かべる。
「そんなに警戒しないでほしいな。たしかに、きみが好きだけど、無理矢理どうこうしたいってわけじゃないから。ただほんとうにお店以外に会えたことと、ユウコちゃんが気持ちわるそうだっただけなんだ。……でもどうしてもぼくとはなすのもこうしてとなりにいるのもいやなら帰っていいよ」
 言って袋から缶コーヒーを取り出して飲む吉田さんにおれは申し訳なさを感じる。
 もしかして、喫茶店で断りをいれたあと、オムライスにあんなメッセージをおれに書かせたのは吉田さんの冗談だったのかもしれないって。
 おれがあのまま席をたっていたら、今後ぎくしゃくしてしまうかもしれないと吉田さんが気遣って笑い話にするためにやったことなのかもしれない。むかしからおれは冗談が通じないといわれることも多くあったし、あのとき吉田さんの冗談をおれが勝手に真剣に受け止めてしまったんじゃないだろうか。
「あ、これよかったら使って。酔い止めだけど、気持ちがわるいときにも使用してもいいらしいから」
「え、はい」
 いまだってこうしておれのことを気遣ってくれるし。
「……あの、吉田さん」
「なに?」
「さっきから、おれ態度がわるくてすみませんでした。ほんとにごめんなさい」
 言うと、吉田さんはきょとんとした顔をしたあとに「いいよ」と笑いかけてくれた。
「あの喫茶店でしか面識がないうえにいきなり告白されたらだれだってきみみたいな態度をするよ。だから、ユウコちゃんが謝ることはない」
 やさしい笑みを浮かべてそう言ってくれる吉田さんに、良くない印象を抱いていたことがはずかしくなる。
 いまさらだけど、吉田さんは喫茶店でもいいひとだって言われてたし。宮本さんがおれに『気をつけたほうがいい』を言ってくれたけど、それはおれが宮本さんにたいして説明したものがわるかったからへんに心配させてしまったからああいってくれたんだと思う。
「……ユウコちゃん、どうかした? なんかしずかになっちゃったけど、もしかしてまた気持ちがわるくなってきた?」
「いえ、ちがいます。っていうか、その……仕事じゃないんでおれのことをユウコちゃんじゃなくて名前で呼んでくれませんか? おれ、渋谷有利っていいます」
「ああ、ごめん。それじゃ、有利くんって呼んでいい?」
「はいっ!」
 頷くと吉田さんがすこし照れくさそうな顔をみせた。いきなり芸名じゃなくて名前で呼ぶのは、いままで友だちを苗字呼びしていたのに名前呼びするような気恥ずかしさがあるのかもしれない。
「そうそう。渡した薬だけど、さっきも言ったように酔い止めにいちばん効果を発揮するから、電車で酔うならもっていて損はないとおもうよ。眠くなったり、飲むまえになにかお腹にいれなくてもいいやつだからおすすめ」
 あたり前だが、吉田さんはおれが満員電車で酔ってしまったと思っているらしい。言われて、おれは微苦笑しながら首を横に振る。こんなに親切にしてもらってるのに、うそをつくのはよくない。
「おれ、電車で酔ったわけじゃないんです。……恥ずかしいはなしなんですが、痴漢されてたぶん、その嫌悪感からくる気持ちわるさっていうか」
 言えば「えっ」と吉田さんがことばをつまらせた。
「……それで相手は通報した?」
「いや、相手が男だったっていうのもあって自分も男なのにされてることを恥ずかしくて言えなくて、されるがままになっちゃったっていうか……」
 そうあたまをぽりぽり掻きながら乾いた笑いで羞恥をごまかしてみたが、吉田さんは怒ったような顔をして「有利くんの気持ちもわかるけど、そういうのはよくないと思う。でも、言えないようなら電車の時刻とか、車両をかえるなりしたほうがいい。それにはずかしいことじゃないよ」と言ってくれた。
「なにかあってからじゃ遅いんだ。わかった?」
 と、真剣に注意してくれる吉田さんは今月喫茶店でのテーマである『先生と生徒』の先生そのものでおれは思わず笑いながら「わかりました。吉田先生」と答えてしまった。
「こっちは冗談でいってるんじゃないんだよ?」
「わかってます。ありがとうございます、吉田さん」
 やっぱり、吉田さんはいいひとみたいだ。


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