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(勇者の為に命を賭けているのか…?)


俄かには信じがたいことだった
何故なら最初に二人が出会ったとき主人公は言っていた
実際に勇者に会ったことがない、と
そして勇者と接した者なら誰もが持っているはずの「記憶」も持っていなかった

つまり主人公とリンクは全くの他人ということになるが
主人公はリンクを見つけるために命を賭けていると言った

赤の他人の捜索に命を賭けているのだと



「だからどんなに危険でも影の世界には行くし、…多分この先、それ以上の危険を乗り越えるくらいじゃないとリンクは見つからないと思う」


「何故…そこまで……?」



「何故って…そりゃあ…―!」




主人公が言葉を途中で区切ったのは
主人公と勇者の影の間にまた光の筋が出現したからだった

少々時間差はあったものの
漸くムジュラも運ばれてきたのだろうと思い主人公はその光から少し距離を取った


紫の細分化した粒子が下から浮かび上がり
集合して人型の姿を形成すると
まるでそのタイミングを図っていたかのようにムジュラが叫び声をあげた




「あンの糞オンナァぁーー!!!」


「!!?」


「……」


主人公はぎょっとして思わず飛び退き
ムジュラの正面に居た勇者の影は冷静に耳を塞いで対処していた

その大きい金切り声の直後
砂漠は普段の十倍ほど静まっているようにさえ思えた

肩で息をして俯くムジュラに、主人公は恐る恐る声をかけた



「ぇ、…む、ムジュラ?」


「っ、うぅ、ふぇ…主人公ーー!」



ムジュラは主人公の姿を見つけるなり、目に涙を浮かべて彼女の体に泣き付いていった



「ギャァ!!」


主人公はその抱擁から逃れようと後ろを向いて走りだしたが
走り出しが遅く背後から腰に抱きつかれて俯せ状態で砂にダイヴした




「やめ、あっつ!ちょ、ムジュラ!離して!!」


「アノ女がっ、ボクの、魔力奪ったンダァぁー!!」




ムジュラは主人公の小さい背に頬摺りをして本気か嘘か判別しがたい号泣を続けた
その為に主人公は身動きも取れず直ぐ下からの砂漠の熱気に悶え続けた


こんな時こそ勇者の影に頼ればいいじゃないかと思い付き
主人公が勇者の影の居た方向にぐいっと首を曲げてみると




「なっ、…ちょ……勇者の影!?」



勇者の影は砂上に倒れていた







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