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「で、……ボクは運んでくれないみたいだけド、ナンか用?」




大妖精の支配する洞窟に主人公も勇者の影も
ついさっき大妖精の放つ光に運ばれその姿はない
ただムジュラだけはその光に包まれ損ねて、今もなお大妖精と対峙している最中であった

ムジュラは落ちてきた主人公を受けとめたというのに、その主人公に大した礼も貰えず
大妖精と主人公との深刻そうな話にも入れてもらえず
更には処刑場への移動も出遅れる羽目にさせられ

積もり積もってイライラむかむかしていた




「…いえ、ただ…貴方の異質な匂いが気になったのです」


「…あっソ」



そんな理由のために自分が取り残されたのかと思うと、ムジュラは言いようの無い破壊衝動に刈られて
無意識の内に禍々しい邪気を放出した





「貴方はハイラルの理から大きく外れています」



しかし大妖精が浅い泉の中に腰を下ろすと同時に
広い洞窟内の空気が重く沈み始めた


「!!?」


押し潰されるような空気の重圧は一瞬にしてムジュラの周囲の気を浄化した



「お前、何しタ…!?」


「その存在は…この世界には相容れないものと、貴方は気付いている筈です」


「俺サマに何したって聞いてんだヨ!!」



ムジュラが怒鳴るが、すぐ響くはずの声は岩の壁に当たりもせず落下するように消えた
その怒りは天変地異さえも引き起こしかねないものであるはずが、不気味なほどに洞窟内は静まっていた

この空間は完全に大妖精に支配されているのだ



「貴方が辛うじて消えずに居られるのは神の憐れみのため」


大妖精が掌に一掬いの水を持ち上げ、微かな息を吹き掛けてからそれを泉に戻す動作の後
水が落ちる地点から不自然な勢いで水が湧き始めた



「何すル!?」


「貴方の力は強大で狂暴な魔」


「ナニしやがるンダ!!」


水はあっという間に洞窟の地面を満たし水位をあげていった

ムジュラの素足が水に浸ると、水に触れた箇所から力が吸い取られていく感覚が襲って、ムジュラはその場に崩れた




「貴方の力を奪いましょう…この先使えるのはたった一度の魔力のみです」



「オマエッ、なんで…っ!!」



何故この自分がこのような仕打ちを受けなければならないのか
その理不尽さがまったくもって理解できなかったが
例えそれらしい理由を並べられてもムジュラが納得することはなかっただろう



ムジュラは立ち上がることもままならず膝を着いたまま更に泉の水に沈み始めた
同じ目線の高さで座っている大妖精は終始涼しい顔でムジュラを観察していた





「オレさまは、ムジュラだぞ!!」




ムジュラは完全に力が奪われるその直前に叫び


水に呑まれていった







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