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「いや、とにかく助かったよ…ありがとね」

主人公がムジュラの腕から抜け出し、ここが何処なのかと探っている最中
静かなだけだった泉の上に柔らかい光が出現し、声が洞窟内に響いた



「そろそろ来る頃だと思っていました」



泉の碧色が洞窟の壁中に反映され神秘的な空間に変わっていった



「私は大妖精…世界の妖精を統べる女王」


泉の光から花開くようにして姿を現わしたのは
身体を覆うほど長いエメラルドの髪を持つ美女


「女王…!?」


主人公は大妖精よりも女王という言葉に引っ掛かっていた
大妖精の艶めかしい身体の露出の多さに女王というワードが加わり
その雰囲気に圧倒されて息を呑んだ


「ていうか、そろそろ来る頃って、どーいうこと?」


三人は自分達の意志で(ほぼ主人公の強引な決定で)砂漠に来ることを決めたのに
まるで三人が砂漠に来て、しかもこの洞窟に行き着くことを知っていたかのように大妖精は言った

大妖精は目を伏せてから、再び主人公を見据えた
その動作はとても緩やかに流れるようだった



「貴方達は…強い光を目にし、砂漠の異変に気付いて来られたはず…その全てはガノンドロフの思惑通りということです」


「…?ガノンドロフって誰のコト?」


「だったら、砂漠に異変は無いってこと?ムジュラが見た光も、ただガノンドロフが…魔法かなんかで放ったもの…?」


話についていけていないムジュラを取り残して主人公は話を進めた

もしかしたらもしかして
砂漠に来ること自体が無意味だったのなら
ハイラル城からここに来るまでの苦労も全て無駄だったということになる
砂漠に異常な光が見えて
その異変が少なからずリンクに繋がっているかもしれない、そう踏んでいたのに
何のことは無い、ガノンドロフにおびき寄せられただけだったのだ

(確かにガノンドロフは私を狙っている感じだった…)





「光を放ったのは魔法などではありません」


しかし大妖精が汲み取ったのは今ではもうそんなに重要とは思えない光の正体の話だった

大妖精は泉の中から何かの欠片を宙に浮かせて主人公に見せた


「何よ…これ」


「影の世界の光…ソルです」


その欠片の数や一つ一つの大きさを見る限り
元となる物体は両腕に抱えるほどのサイズだろうと推測した


「ソルが魔王に砕かれたとき、強い光が走ったのです…これはその欠片」




主人公は浮いているソルの欠片を一つ手に取った
少し弧を描いている欠片は元の形が球体であったことを教えている
黒ずんだ水晶のような色味で、とても光を放つものには見えなかった


「ソルって何サ」

「さぁ、…私も分からない」

ムジュラと主人公は顔を見合わせた

二人のどちらも影の世界には入ったことが無いのだから
影の世界の光なんてものは聞いたことがない
大体にして影の世界に「光」など存在するのかが第一の疑問だった




「これは…とても大切なものです…遠い昔に、私が奪われた光…」


「奪われたって…ガノンドロフに?」


「ネェ、だからガノンドロフって誰なの」



大妖精は否定とも肯定ともとれないような表情になった

ソルは影の世界の光だと言ったのに、妖精の女王は自分が遠い昔に奪われた光だとも言っている


(影の世界の人が…大妖精から光を奪ったのか?)


一人悶々と考える主人公に
彼女だけに言うように向き直り、大妖精は重い口調で言葉を紡いだ




「私は…どうしてもソルが必要なのです…そして、ソルは他にもまだあちらの世界にあります」





「…なーんか、私たちに頼み事があるみたいね、大妖精さん」




自棄に説明的に、それでいてどうも慎重に言葉を選んでいる感じが見て取れて
主人公は口隅を吊り上げ打算的な微笑を浮かべた




「ソルを持って帰ると誓うなら…貴方達が影の世界へ行けるように力を与えましょう…」






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