AM | ナノ











ここは…何処だ



静かすぎる
暗闇が景色を支配して

自分の位置も分からない







俺は何処だ



俺は









『君は誰…?』





目を開くと


そこは広く薄明るい空間だった

霧が充満していて
床には姿を映すための水鏡が張っている



この部屋は…






俺の目の前にいるのは

目を見開いた男

俺ではない
時の勇者だ




『君は誰なんだ?』



リンクが再び問い掛ける

俺は口を閉ざすことしか出来なかった


俺は誰だ



俺はリンクだ

奴の影だ
ガノンドロフの刺客で

勇者を殺すために生み出された







「 俺は…― 」











『勇者の影#』




別の声がして俺は振り返った


不機嫌な顔の主人公が仁王立ちで背後に居て
促すように鎖を引いている


『なぁーに突っ立てんの?早く行くよ』




いつの間にか水の部屋は消えて
元の暗闇が広がっている



主人公は先を進み

暗がりへと足を運んでいく




「主人公…!」




その先には行ってほしくないと感じた

俺の手の届かないところに行ってしまうのか

暗闇に光を奪われてしまうのか




もうあんな想いはしたくない






「主人公!」


主人公の腕を捕まえる



『勇者の影?』


不思議そうに目を丸くした後
何も言おうとしない俺にまた怪訝な顔をする



その目に俺はどう映っているのか

本心に何を抱えているのか

そんなことは俺には分からない



ただ俺がそう思うだけだ




「主人公を、…失いたくない」



ずっと笑っていて欲しい
ずっと傍に居てほしい

俺の名を呼んでほしい





この気持ちは何だろう
ずっと引っ掛かる言葉は何だ







俺は…主人公が







『…もー、気付くのが遅いよ』



主人公は呆れもほどほどに微笑んだ
まるで最初から俺の心は見透かされていたみたいに


待ちくたびれたと言うように片方の手で俺を小突く





だが突然に



俺が掴んでいた腕から
主人公の体が黒く侵食されて暗闇に同化していく



「…っ、主人公!!」


『あーぁ、…馬鹿勇者の影』



俺の頬に添えた手と

何の裏もない微笑を最後に主人公は跡形もなく消えた







これは幻だろう


またくだらない夢の

その悪夢の続きだろう



そう分かっているのに


どうしてまだ辺りは暗闇ばかりなんだ










[*前] | [次#]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -