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「……」



「…………」



「…」




「……………、…ムジュラ?」





主人公が控えめに尋ねた


仮面はピクリとして音を立て
暫らく黙った後にムジュラの声で笑った





「今ゴロ…オレサマが欲しくナッタか?ケケケ…」



主人公はムジュラの前にしゃがみ仮面を見下ろした




今度の彼女は無言のまま冷たく見返すのではなく
怒りか悔しさか判別しがたい表情だったので
その内容はさておき
ムジュラはざまぁみろというように嘲笑った


ムジュラは人型に姿を変えて上体だけ起き上がらせた

メグをその身に取り込んだことで
幾分か魔力が回復していることを感じ取り
ニヤリと口隅を吊り上げた

自分に向かって散々な態度を取ってくれた主人公に
圧倒的な力の差を見せ付けて仕返ししようと企んだんでいた矢先に

ムジュラの両頬が痛々しく引き伸ばされた




「イダダだダっ―!!」



「あんたのせいで、砂漠行きが遅れたし、皆無駄に疲れたのよ!!」



主人公はたっぷりの嫌悪の表情でムジュラの顔をを変形させた

ムジュラは涙を目に溜めて無理矢理笑った顔を作らされていた




「私は、そーゆう口先だけの、強がりも、人を見下す態度も…大ッ嫌いなの!!」



主人公は指を弾きムジュラの顔を解放した後に
左手で横面を叩き払った



ムジュラは憎悪よりも涙の方がたくさん溢れてくるのを感じてそのまま俯いていた






「まったく、なぁーにが『欲しがれ』だ…一緒に来たいんなら素直にそう言いなさい!!くそガキがっ」






ムジュラは飽きる程貪ってきた人々の欲と
同じものを自分の中に感じた




(ああ、ボクが欲しかったのは…あんな甘さじゃなかったみたい)











「いっ、じょに…、行きダい…ヨ……ふっ、…ぅ、うわぁぁあぁン!!」




ムジュラは主人公曰くの美人顔をくしゃくしゃに歪めて泣き喚いた

幼子がそうするような声を出されて
主人公は耳に指栓をして困り果てた顔をした






強く願うことは卑しいと

誰かを望むことは醜いと



そう思っていたのに



今はもう「つまんない」も「おもしろくない」も感じない


変なの
























「……なんだってんだよ…一体!」



もう騒動は収まったのかと
身構え怯えているトビーに勇者の影は力なく答えを与えた




「二人がどちらも強がっていただけだ…くだらない」


ただ彼も他人にそう言えるほどの素直人かどうか
それがわかるのはもう少し先の話










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