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勇者の影は元の場所に戻る為に観光客用の小橋の道を走り
主人公の声に答える代わりに黒剣を遠くのメグの頭を目がけて投げ飛ばした


主人公もろとも大砲小屋を潰そうとしていたメグは
忍び笑いを漏らして姿を透過し剣を避けた







「ヒィィー!何だあの化けモンは!!」



小屋の近くでただ悲鳴をあげるピエロ姿のトビーの目の前に
丁度攻撃を避けていた主人公が着地した

その直後に自分の横に落ちてきた黒剣にも脅えるトビーに
主人公が声をかけた



「ああ、トビー!!こんな所にいたら危ないって!」


「んなモン見りゃ分かる!あんた、確か主人公つったか!こりゃあんたの仕業かよ!?」



主人公は遠くの方で姿を現した巨大メグに目を戻した
その顔の上の大きな仮面に注目した

何度もムジュラに呼び掛けたのだが返答は無い

仮面の姿になってからムジュラは自ら動かなくなり
行儀良くメグに力を貸しているのだ



こうなったのは自分のせいなのかと

主人公は一瞬だけ表情を曇らせた




遠方でまた懲りずにメグに叩かれ
湖に落ちる勇者の影を見てトビーが息を呑んだ





「相手が悪いかもなぁ…勇者の影一人に戦わせるのは酷だったか」



懲りずに自分だけは回避に専念しようとしていた主人公は周囲を観察し
また姿を消したメグの方を見た

メグの持つ松明だけは姿を消さずにその亡霊の位置を教えてくれている




「トビー、あの紫の炎……弱点っぽくない?」


「あぁ?…そ、そうか?弱点をあんな、曝け出すとは思わねぇが」


「うん、あの炎消そう!」


「おい、俺の話聞いてたか…って、あんた!本当にやるのか!?逃げたほうがいいぜ!」



何処かに向かおうと走りだした主人公をトビーが呼び止めた

主人公は怒った表情を振り返らせて答える








「ムジュラをあのままにはしておけないよ」







ムジュラって誰だと騒ぎ慌てるトビーを尻目に

主人公は大砲小屋から少し距離をとったイカダの足場に立ち
右手を横にかざした






「生命の水、女神の涙……熱きを沈める青の恵み……―!」




主人公が両手で円を描く動きに合わせて
彼女の両脇の水面の一部が沸き上がり
そこから逆さに降り注ぐ雨が主人公の頭上で巨大な球を形成した


口をパクパクさせて言葉にならない言葉をしぼり出そうとしているトビーの前に
主人公はその水玉を置いた

水玉は多少バウンドしながらトビーに詰め寄っていく




「何ボケッとしてんの、大砲よぉーい!!」



「な、あ…大砲で打つ気かぁ!?こりゃ人間用だ!!」



「至近距離なら威力もあるでしょ…はい、もう一球」



軽々と投げ寄越された水球に半ば襲われつつ
トビーはどうなっても知らねぇぞと吐き出して
震える手で大砲のレバーを回し始めた

ファンシーな曲が流れ
小屋の仕掛け屋根から大砲が姿を現すと
それに気付いたメグがゆらゆらと近づいてきた




「き、来やがったぁぁー!!」



泣きだしそうになりながらも
もう何度も続けてきたレバー回しの動きは猫背と共に身に定着しているようで
トビーはその作業を止めなかった




「うわぁ、…マジでこっちに来ちゃうわ…勇者の影は何処行ったのよ」



先程から姿が見つからない勇者の影に文句を言えども状況は変わらず
主人公は意を決して自分が囮になることにした



「トビー!少し、アレの気を引いとくからちゃんと仕留めてね」



主人公は最後にもう一球の水を置き
向かってくるメグの元に駆け出した











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