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「俺はモイ、あれは息子のコリンだ」



モイは人当たりの良い顔で自己紹介を軽く済ませ
最後の魔物に覚束ない剣でとどめを刺す少年を指差した



「私の名は主人公、さっきは危ないところをどーも」


主人公は自分の名前の部分を妙に強調して、後の方は少し棒読みだった



「しかし一人で平原を越えるとは……少し無理があるんじゃないか?」


モイは主人公の口調など気にせず彼女の心配を始めた
普通一人旅をする者というのは自分の身を守る技術を持っているものだが
雑魚モンスターにやられそうになっていた主人公の光景を思い出すとそうは見えない



「まぁ確かに、あなた方の牛車に、…山羊車かな?それに乗せてくれると助かるんだけど」



主人公はモイの後方に止まっている山羊の引く車を指差した
彼らが進んでいた方向が自分と同じだと気付いて
悪怯れもなくそう願い出る

だがモイの方はやはりそんな彼女の態度を気に掛けることなく
寧ろ取り繕いの無い雰囲気が気に入ったようだった



「あぁ、そうするといい!俺もそう言うつもりだったんだがな」






山羊に車を引かせるからどれ程の速度かなんて期待できなかったのだが
意外にも牛より速いくらいだった


「トアルの山羊は強いんだよ、暴れだしたら大変だから普段は車は引かせないんだけど」

山羊車の中で主人公は少年コリンと一緒だった
長旅に話相手が居なくて余程退屈していたのだろう
コリンは主人公を相手に自分の村の話を聞かせていた



「とある村ねぇ…、それって森の先にあるの?」



主人公は自らの使命を忘れていたわけではなかった
彼女の目的は『時の勇者』を見つけだすこと
ハイラルの王女ゼルダの話を頼りに『勇者』の故郷である森の先の村を訪ねる道中だったが
コリンの話では彼らの暮らすトアル村がそれにあたるらしく
今から向かうところも同じくそこだった





「ん…?コリンは、そのトアル村の人なんだよね?」

「うん」


「だったらもしかして、あの…勇者のこと知ってる?確か名前は、えっと…―」







『リンク……!?』





モイの声が車の前の方から聞こえ
丁度良いタイミングで会話が成立したように思えたが
どうもモイの声が普通でない



「そう、そのリンク」


「リンクを知ってるの?主人公、何で…」


「知ってるの?だったら彼が何処にいるのか、何か手がかりでも…―」




『うわぁぁぁぁ!!』


「!?」

「父さん!?」


モイの叫びを聞いてコリンが身を乗り出し荷車から顔を出そうとする
主人公は会話を中断されたことに不服で
外の事態の面倒さを睨んだ






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