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確かに勇者の影の影は主人公やムジュラのものよりも色濃い黒色が広がっていた




「これが入り口か…っ!何故俺の影から」


「知らないけど!…とにかく、この方々に消えてもらわないことには入れない!でしょー!」



主人公の言葉を聞いたムジュラも彼女の後に続いて勇者の影の元に寄ってくる


「ムジュラ!どーにかならないの?また奴らの動き止めてさ!!」


「んんー、なぁに?ボクが欲しくなった?」



懲りずに勇者の影を苛立たせる発言をするムジュラに
勇者の影が剣を突き刺そうとしたところを主人公が制した




「ムジュラ、お願い!」




「はぁーあ、悪いけどサ…太陽進めて疲れちゃったんだ…ゴメンね、主人公」



「ぇ、…はぁぁ!?」




ムジュラは大きな欠伸を一つ済ませた後
体を薄紫に光らせて見る見る質量を小さくし
仮面の形になって主人公の頭に乗った



「ふん、肝心な時に役立たずな仮面だ」



「(勇者の影にもそういうとこあるけど)…とにかく、こいつらどーする!?」





「…全て潰す」



見れば勇者の影は剣を片手に低い姿勢で構えていた
主人公が何か声を掛けようとした時
勇者の影は片足を軸に体を回転させた



「いゃぁぁあー!!!」



同心円状に黒剣の斬撃が広がり
一瞬で霧となった魔物がその平原一帯の景色を黒くした
主人公は勇者の影の攻撃を避けるために必要以上に高く跳び上り
着地直後に勇者の影の頭を叩いた




「大丈夫だったか」


「何今の?どーいうつもり!?馬鹿じゃないの?ばっかじゃないの!!?」



「主人公、まだ全て片付いてはいないぞ」



だからまた口論などしている暇など無いのだと言うようにあしらう勇者の影に
腹立たしくなった主人公がいつものように光の矢を荒々しく掴んだところを

勇者の影が目を鋭くして主人公の手首を捕まえた


「なっ、勇者の影!?」


勇者の影はそれを影の中心から出現しようとしている魔物ごと
自分の影の暗がりに突き刺した

それに共鳴して全ての魔物は一斉に胸部を体の内側から破裂させ
空に雄叫びをしながら散々に身体を失っていった




「うわぁー……凄い、何で…」


「やはりか…光の矢は用途が広いな」


「え、何?こーいうこと知ってたんなら教えてよ」



「いや、勘だ」


「……」


「ヒヒヒぃっ、やっぱり勇者の影って馬鹿ダナぁ」


勇者の影はムジュラの言葉には反応せず自分の足から伸びるシルエットをじっと見つめた

黄昏の陽光によって黄金に光るハイラル平原の上に
一際長く伸びる勇者の影の影から


影の魔物達は現れていた







「ここが…影の世界への入り口?」



「恐らくは、そういうことになるが」







主人公は期待に胸を高鳴らせた
全く上手く行かないことだらけだった旅が
やっと少しだけ前進する、そう思い主人公は叫びたいほど嬉しくなった





「ここに入ろう、影の世界に行こう」






目的を果たすため


主人公はその影に足を伸ばした






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