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《 …勇者を見つけなさい… 》



「ふぇ!?」


突然の声を聞いて私は思わず立ち上がった
そのせいで私の膝に載っていた子猫が迷惑そうな泣き声を漏らして地面に着地した

私は猫に気を配るより先程の声の主を探して里のあちこちに視線を配らせた




「…インパルさーん!今何か言わなかった!?」



私は小屋の窓に向かって問い掛けた
中で昼食のスープを作っていたインパルさんは不思議な顔をした後
ゆっくりと顔を横に振った



「おかしい…」


私は忘れ去られた里の乾いた風に揺れる自分の金髪を払い除け頭を捻る
寄り添ってくる猫達の頭を撫でてやるとまた声がした





《 勇者を見つけなさい…主人公 》



「誰だ!」



私は勢い良く体を振り返らせる
しかし背後にも何処にも私以外の人の姿は無くて
無駄に足元の三毛猫を蹴ってしまった




《 それが貴方の運命…背けば神の裁きを受ける、…主人公よ、時の勇者を見つけなさい 》



「私は神は信じていないんだよ、…こそこそしていないで出てきなさい!」



私は腰を低くしていつでも起こりうる襲撃に備えた

でも構えていた自分の利き手の甲に
気持ち悪い模様が浮かび上がっているのを見て鳥肌を立てて悲鳴をあげた


手の甲の中心には黒い三角形がありありと浮かんでいた
皮膚の下にそういう形の板でも埋め込まれているようにはっきりとしている



「キモッ!気持ち悪ぃ!!何だこれ」



《 時の勇者を… 、主人公  此処に … 》


段々と小さくなり消えかかる声は確かに
私の手の甲の逆三角から聞こえてきた




「ちょ、何…?どういうこと?勇者って何!?」



《 主人公よ… …、か… 、ど…か…… 》






   それが


     貴方の運命




























主人公は気持ち悪い温かさを感じて目を覚ました
たった今見ていた懐かしい夢の為にすっきりしない朝の目覚めだ


(くそぅ…)


主人公は憎たらしい自身の右手を睨み付けてやろうとするが

平原に横たわった体は上手く動かすことができない
そう言えば先程から全身を覆う生暖かさは何だろうと疑問に思い

主人公は顔を上げた







「お早よう、主人公」



主人公が顔を上げた先で彼女を見下ろしていたのは


見知らぬ美人だった





(っ誰!!?)


あまりに整った顔立ちは女か男か識別しにくいものだったが
怪しく笑う表情は女らしくなかったから恐らく男なのだろう
主人公はあまりに近過ぎるその美人の顔から距離をとろうと藻掻きだすが
腰にガッチリと回されたその美人の腕が主人公を離さなかった



「暴れないでよ主人公、そんなにボクの腕の中が嫌イ?」


「いやいやいやいや、何ですか君は!ていうか顔が近いでしょー!!」



喋りながら近づいてくる美人の顔を押し退けながら
主人公は朝一のコッコより大きな声で悲鳴を上げた



「ふふーん、主人公は近いのが好き?顔が喜んでるヨ」


「誰が喜んでるって!?こ、の…っ、勇者の影!勇者の影!!」



主人公が体を捻らせながら勇者の影が座っているであろう焚き火の向こう側を見る


しかしそこに勇者の影の姿はなかった







「勇者の影は居ないシ、助けは来ない…ねぇ、どうする主人公?」




見知らぬ美人の青年に微笑まれ
主人公は久々に本気で身の危険を感じた







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