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「あれが…本当に『神』だと…?」



氷のように純白の床を鳴らして赤い髪の女が言う

高い椅子に座る青髪の女は
閉じていた目を静かに開いて答えた




「そう思いますわ…ディン、貴方はどちらへ?」


「どうもこうも…あの男が砂漠でまた問題を、……ネール…『神』と話していたのか?」


ネールは肯定と取れる微笑をディンに向けて長い髪を揺らした

ディンが部屋の中央に据えられた大きな器に近づく歩みに合わせて
ネールも椅子を下りて白い床に降り立った




「トライフォースは…集結しないのですね」


「力のトライフォースはもうすぐさ、でも勇気のトライフォースはどうして…?」



その器に納まるはずの黄金の結晶を想い
ネールは眉間に皺を寄せて無色の器に触れた



「彼の仕業でしょう…」



「…何を考えているんだ、『あの男』」



ディンは右腕が感情に比例して炎と化すのを制御しながら
ネールと同様に器に手を置いた

二人は目を閉じて念を込めた
神の力を持つ人間にだけ伝わるメッセージを送っていた



どうか在るべき場所に還るようにと





「ディン…雑念を捨てなさい」


「…フロルが気掛かりなんだよ」




二人は同時に手を下ろして器から離れた
そしてもう一人の
自分達と同等に立っているはずの彼女の姿を想った





「風を吹くことも出来ていない…」




「早く…主人公を呼び寄せなければ」






ネールはハイラルの景色が広がる鏡を覗き込んだ


平原に野宿する旅人
宿で眠らない観光人
夜空を楽しむ貴族

城の中庭で笑顔を漏らす主人公



夜を過ごす人々が

何も知らずに消え行く


そう遠くない彼らの未来の為に



ネールは涙を流し


その夜のハイラルに小雨を降らせた















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