主人公は窓からの月明かりに目が覚めた
客人用の広いベッドは居心地が悪く
寝返りをうつと手に握っていた鎖が無いことに気付いた
(また逃げられた)
自嘲気味にため息を漏らして主人公は起き上がった
姿の無い勇者の影はもう城には居ないと考えるのが普通なのだが
主人公はまだ城内に居るように思った
城の廊下を歩いていると不意に彼女の右腕が痛みだした
右手の甲から広がる痺れに苦い顔をしてそれを見た
黒色の逆三角形が手の甲に浮き上がり
それを制御でもするように血管が痛々しく浮き出ている
(いつ見ても気持ち悪い)
《 主人公よ 》
「うわっ、こんな所で喋らないでよ」
手の甲の紋が光りを帯びて声が聞こえた
主人公は慌てて手の甲を押さえて声を潜めた
《 早急に勇者を見つけなさい 》
「わかってるけど、…ていうかあんた達が見つけられないのに、私に探せっておかしいんじゃない?」
自分の手に向かって悪態を示すなんて怪しい行動は
やはり昼間のこともあって夜の城内では取りたくないことだが
主人公はできるだけ声量を抑えて怪しい行動に撤した
《 …勇者の影、あの者と貴方は共に居てはいけない 》
「こっちの話無視しやがって…勇者の影のこと?彼は何?あんた達の嫌がらせじゃないの?」
《 あの者は貴方を滅ぼすことになる 》
「知ったふうなこと言うな、勇者の影は馬鹿だけど多分いい子だっ…て途中で話止めるなっての!」
右手の三角は光を失い肌色に戻った
主人公はぶつぶつ文句を言いながらまた勇者の影を探すために歩きだした
リンクを探すことはどうも単純に解決しない
次の目的地を影の世界と絞り込んだものの
そこへ行く手段がどうも無いようでは旅はますます難航を究める
(でもどうして奴らはリンクを…いやそもそもリンクが消えたのは何でだろ)
ゼルダに問い詰められたことを思い返して主人公は考え込んだ
目的も知らされないままに旅をしてきたが
今更にそのことが気持ち悪いと感じた
「その点勇者の影は直ぐに見つかって助かるんだよねー」
主人公は外に探し人の姿を見つけて頭を切り替えた
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