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「じゃー、そこまでして『記憶』を食べる理由を聞かせてもらいましょうか」



「人々の記憶は…勇者を客観視した情報だ」


勇者の影は頭に光の矢を刺して痺れたまま口を開いた

右腕は吹っ飛んで頭に矢を刺した男が平然として声を出すのはぜひとも止めてほしいとゼルダは願った



「俺はそれを取り込むことで、『この姿』でいられる…そしてより力を得られる」

「代償に人々は記憶を失うのですね」


主人公がまた暴走する前にゼルダが補足したが
そんな細やかな努力を踏み躙るように主人公の低音声が響いた


「へー、じゃあ今のハイラルで人々がリンクを忘れて、私のリンク探しが手間取ってたのも勇者の影のせいか!?」


「ネェー主人公遊んでぇ!」

「うるせー!!」


性懲りもなく主人公に近づいた仮面は左目部分に光の矢をブッ刺され
床に音を立てて落ちると恐怖のあまりガタガタと震えてバイブレーションが耳障りに響いた




「し、しかし主人公…何故リンクは姿を消したのですか?」


「はぇ?」



急に自分に話題を提示されて主人公は頭を真っ白にした


「人々から存在を認識されなくなった彼が居なくなったことをどうして知り、彼を探そうとしたのは何故ですか?」



「それは…」


怒りをすっかり失いますます言葉を濁す彼女の様子をゼルダも勇者の影も冷や汗をして観た
この流れを崩さないように話題を誘導するゼルダを勇者の影は小声で応援した


「ソーンなことドウでモイイの!!」


ムジュラの空気の読めない叫びに
光の矢さえ無ければまた角の一つをへし折りたくなった勇者の影だが
主人公はムジュラの言葉に同意した


「うん、まぁ、どーでもいいわそんなこと…リンクは居ないし、私たちは彼を探すしかない…そんだけ」



会話を切り上げた主人公に納得できた者はいないが
場が収まったことに二人は安堵した



「ねえゼルダ!今日は泊まってもいい?」


「え、ええ喜んで」



「待て、本題が抜けている」


夕食の豪華さを期待していた主人公は勇者の影の言葉に我に返り手を叩いた




「そうよ、リンクの手掛かり…ゼルダに聞きにきたんだ」



二人の話ではもうハイラル全てを探し尽くしたらしい
勇者の影にいたっては丁寧に人々の記憶まで取ってそれでも勇者の姿は無かったと

それを聞いたゼルダが思い当たる場所は一つあった



「あと一つ…彼に所縁のある場所があります」



主人公はゼルダの言葉を待った
あれだけ探しても見つからないのなら死んだとしか考えられないところで
絶えず手掛かりを与えてくれる王女の言葉は神にも思えた





「影の世界です」



「……」


「そこにはどうやって行くの?」



喜び食い付く主人公に対して勇者の影は無言で眉を潜めた
というより動けない彼にはそれくらいしかできないのだか


「西の最果て…ゲルド砂漠に聳える塔に、影の世界への入り口となる『陰りの鏡』が…」


「そこに行けば影の世界に行けるのね?」



「それはどうだろうな」



否定を匂わす勇者の影の言葉の意味を
主人公が追求するより早くゼルダが答えをくれた







「陰りの鏡は消滅しました」









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