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「な、何だ貴様ら!」



門を潜った直後にも二、三人の衛兵が立っていて
黒剣を抜いてやってきた勇者の影を警戒した



「いや、すみません!何でもないです、今帰ります!」


「…(帰ってどうする)」



そう言って主人公が鎖をピンと張り詰めた状態で強く引っ張る
しかし勇者の影はまったくそんなこと意に介さず

数秒で二人を取り囲んでいた兵士たちを切り伏せた




「やっ、な、何やってくれてんのよ!」



「…フン、これだけ武装していれば死にはしないだろう」


「そこは問題じゃないの!!あぁもう、城中の人間倒すわけにはいかないでしょーが!」


「その方が早い…と思うが」


「早いけど、確かに私もそう思っ…あ、ぅわ!何処行くの!?」



勇者の影は突然走りだして主人公の手から鎖が抜ける
走る先を見れば異常事態の対処に城内から出てきた城兵の小隊だった

外に出てきたばかりの彼らに勇者の影は剣を振り回して切り込み
小隊は哀れにもあっという間に潰された




「勇者の影!!やめろ!やめなさい!」



主人公の呼び声を聞く前に勇者の影は既に正面の入り口からハイラル城の中へ入っていた




「何を張り切ってんだあのバカ!」



主人公は厳重に警備されている城内まで勇者の影を追うべきか否か悩んでみたが
左右の城塔の方からもわらわらと兵が走ってくるわけだからもう正面の入り口に進むしかなかった





「う、っわー」


城内に入ってすぐに広がる巨大な廊下ではもう事後
害虫駆除剤にやられたMr.Gのごとく兵士がくたばっている地獄絵図があった



「勇者の影一人で城落とせるじゃん」


転がる男たちを飛び越えて勇者の影の後を追う
幸か不幸かそこら中に倒れている彼らが道しるべになってくれていた



「っ、てゆーか…ゼルダが何処にいるのか知らないんじゃないか、勇者の影…私も知らないけど」




主人公は立ち止まり考えた
勇者の影が今日は特別張り切っている理由を推測した


「…まさかゼルダに何か用があるんじゃ」



彼が狙うならやはりゼルダの持つ『記憶』だろう
いや、そうに違いない
それしか考えられない



「ゼルダの記憶が食われたら…、リンクの手掛かりが無くなるわ!」



勇者の影なら記憶の匂いとやらを辿って簡単にゼルダの元に行けるわけだ

リンクの捜索に非協力的な勇者の影が頼りない状況で
彼女の記憶まで失ってしまっては八方塞がりだ

それだけは何としても避けたい





「くそ、実は勇者の影って役に立たないじゃん」



主人公はとにかく急いだ
勇者の影の足に追い付く自信はなかったが兵士が少しでも彼の足止めをしてくれることを切に祈った











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