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昨晩の騒ぎのせいで中央広場は通行止めになっている
そんな制限などなくても足の踏み場もないその場所を通ろうなどという物好きはいなかった

と言いたいところだが
やはりどの世界にもそんな物好きは存在していた





「ねぇ、だったらどーやって城に辿り着けるの?その広場をヒョイヒョイっと行けばいいでしょ?そうでしょ?他にどんな経路があるてーの?え?」


通行止めに立ちはだかる兵士に強気な態度で詰め寄る主人公
その先を通らなければ到底ハイラル城には辿り着けないわけだからここは引き下がれないのだ


「いや、しかしねぇ、君…この先は危険なんだよ」


誰が何と言っても規則は規則
町民を守るための規則を健気に貫き通すのは
昨日の門で忠告をしてくれた親切新米衛兵



「ったくコレだから頭の固い城兵って嫌なんだ!もうやっちゃうよ?まじでさ、やっちゃいな勇者の影、こいつやっちゃいな」


(何だこのキャラは…)


昨日のようにずずいと体を前に出された勇者の影は
やはり面倒臭そうに少し高い目線から兵士を見下ろした



「…き、っ君たちの為なんだぞ!私に従わなければ法律に触れる、かもしれんし」


最後に自信の無い言葉を付け足しつつも
キッと勇者の影の目に対抗する新米君
何だ意外といい目をしている奴だと感心している勇者の影の背後で

プツンと気持ち悪い音が聞こえた






「法律…とか、…決まりごと、制限、規則、しきたり……私、大ッ嫌い」



急に様子を変えて拳を作って歯を食い縛る主人公を勇者の影は見た

その言葉は過去の虎馬から来る怒りのようだが
それ以外にも何かを含んでいるように感じた





「…だ、そうだ」



「へ?…ぶふぇっ!!」


向き直った勇者の影は新米君の腹を蹴り飛ばした



「……え、…ぁの、勇者の影!?」


新米君が人間大砲のような勢いで飛ばされていったのを見て
我に返った主人公はその事態の重大さを知った



「どうした?早くしろ」


「あ、ぁ…はい」



地に大の字で倒れる新米君を横切りさっさと向かうはハイラルの王女の元




しかし城の前の大門にもやはり警備の兵士は居た
こう言ってはなんだがそんなに強そうではない小柄な男と肥満体質の男だった


「何だ、君たちは」


「王女ゼルダに謁見させていただきたいんです、けど?」


また勇者の影が間違って彼ら蹴り飛ばしたりしないようにいやに丁寧に言うが
どうもその兵士の反応は宜しくないようで




「悪いがね、君たちのような…っぐぁぁぁ!」



主人公の申し出に早速断りの言葉を喋っている最中に
おやおや何か穏やかではない事態が再び起こっている


「な、何をする貴様っ、うぉあ!!」



いかにもやられ役らしい雑魚の悲鳴をあげる先程の兵士の声が目の前で交錯し
主人公は自分も叫びたくなった


「勇者の影!!?」



やはりというか何というか
勇者の影は倒れている兵士の間に剣を抜き立ち尽くしていた
主人公は溜め息と頭痛を抑えるのにすこし時間がかかった

できれば面倒な事件や危険な賭けとは無縁でありたい主人公にとっては
国家直属の警備兵を倒してまで城内に押し入るなんて案は遠慮したい代物だった


「何をしている、行くぞ」


「あっ、ちょっと待ちなさい!」



城への大門を押して入る勇者の影の首の鎖に逆に引っ張られながら主人公は危なっかしく後を追った







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