AM | ナノ







宿の食堂に向かうと、やはり主人公は既に席に着いていた
彼女はいつも朝が早い、見習いたいところだが朝はクロの苦手とするところなのだ
大きな欠伸をしながら、クロは主人公の向かいの椅子を引いてそこに座った


「ふあーあ、おはよう主人公」

「おはよ。珍しく早いわね」


そう、彼女の言うとおりクロにしては早い朝だった
普通の村人が起きて活動する一般的な時間なのだが、クロにしては、早い
そんなことを指摘されたクロはガシガシと頭を掻いて苦笑いを零す


「んー……何か変な夢見たんだ」

「…どんな夢?」

「それが……よく覚えてないんだけど」

「そう…」


新しく席に着いたクロに、アンジュがやってきて冷たい水で満たされた杯を手渡す
礼を言って受け取ったそれを、クロは一気に飲み干した
喉が上下し音を立てる様を主人公はどこかぼーっとした赤目で眺めていた

そして呟く、私もおかしな夢を見たのよ、と

しかし水を飲むことに集中していたらしいクロの長耳に完全に拾われることはなく
手の甲で口元を拭いながら首を傾げて何か言ったかと視線で尋ねてくる

主人公は小さく笑って、首を横に振った



「何でもない、ただの独り言よ」


「……そか」


「それよりダークリンクくんは?」

「ああ、外の空気吸いに行くってどっかいったよ」


あくまで魔物の青年には朝食など必要ないのだろうか
主人公は眉間を狭くして、定食セットを三つ頼んでしまったことをクロに打ち明けるのだが
自分が食べるから問題ないと朗らかに笑って返された、そう、クロは細身であるのによく食べる
主人公もよく食べる方ではあるのだが、朝のうちに胃を満たしてしまうのは好きではなかったので、任せることにした





カカリコ定食Bセットの、コッコの唐揚げを頬張りながら、クロは主人公を見詰める
彼女はデザートのミルクプリンを口に運んでいる最中だったが、その赤い瞳はどこか物憂げに見えた
もうすぐ定食の二つ目を平らげようかというところで、手を止めこちらを見ているクロに気づき主人公も釣られて手を止めた


なに、と視線の意図を聞くよりも早く

ぽつりぽつりと、クロが言葉を零していった



「俺、まだ頭の中もやもやで、色々、思い出せないこともいっぱいなんだけどさ、」



「………うん」



「主人公ってきっと、元いた世界では、大切に想われてたんだろうなぁ」



まるで自分のことが嬉しいとでもいうかのような表情でクロがそんなことを言うから
主人公は笑い出した、初めはくすくすと、でもだんだん笑いは大きくなっていった

今朝から心に突っかかっていた何かが解消されたような、晴れやかな気分だ



「ぷ、あははははっ、なによ突然…!」


「何となくそう思った、だけだよ」


「そうねぇ…でもきっとそれはあんたも同じよ、クロくん」



そうだといいなぁ、笑って返すクロも彼女と同じ晴れやかな気分だった

どうして突然こんなことを言い出そうと思い当たったのかは分からないけれど、何となくそんな気がしたのだ

ハイラルを覆う暗雲などないかのように笑い合う二人をダークリンクが見つけ、ちょっとした疎外感を抱き唇を尖らせていたのだが
今の二人にとってはそれすらも、明るい話題の一部となって、溶けていく
見たかどうかも怪しい夢の内容などもう殆ど憶えてはいなかったけど
確かにあった時間だ、今ここで三人が集ったのと同じように


いつか、別離して、時を重ねて、この記憶はどこかへ埋もれてしまうかもしれない
だけど今この時を、過ごしたという事実だけは、誰にだって変えられないことだ
願わくば共に過ごした一秒、一分、一時間を
一年先でも十年先でも、出来るだけ長く覚えていられればいいと
彼らはそんなことを願った、時の流れの残酷さを知っていようとも、願わずにはいられなかった



11.0401.




* * *



空渡りの翡翠さまより!円の誕生日にいただきました!!リレー小説ATの番外編的なお話ですね!

何て言うか取り敢えずもう何も言えない…何も言葉にできないこの円の心境を理解していただけるだろうか…。はぁもう何も言えねぇ。
一先ず何よりも先に突っ込むべき事はゴッドさんのデレッぷりだと思う。ていうかあの二人相思相愛すぎて絶望した(笑)赦されるんだろうかこれは…ドキドキ…何か色々と敵に回しかねない気がするが…まあいいか←
そして勇者の影vs黒たんの夢の相関が叶った瞬間である。黒たんの出現により勇者の影はもう形無しですね、黒い感じがすごく…被ってます(笑)黒たんがAM組の中に入るとあんなにアウェイになるとは誰が予想しただろう…。でもここだけの話、黒たんが酷い扱いを受けている様に円は酷く興奮を覚えるんだ←ミンナにはナイショだよ

一方ではイクサくんがゴッドさんにジェントル過ぎて本当にわたしはどうしようかと思った。嫉妬で焼け死ぬかと思いましたよ<◎><◎>
しかしながらポジション交換しても違和感がないムジュラの不思議…戦慄した←
流石仮面ラバー翡翠さまですよね、何だかAMのムジュラまでも可愛く見えてくるという…ていうかゴッドさんの待遇良すぎだろぉ/(^O^)\膝枕に頭なでなでってなんだこれぇぇええ!え、これ黒たんにも普段からしてるんですか?ちょ、やめてぇぇぇ想像したら癒されちゃうから!!汚れきった円の心が浄化されて消滅するから!

それにしても各各のメンバーの反応がなんとも可愛らしくて幸せな気持ちになりますね…。大切に思われてるのが解ります、いやグレイくんは相変わらずのツンだけどね!ていうか主にAM組の最初の慌てぶりが面白すぎた(笑)だって翡翠さまったらやっぱり我が家の子達を書いても忠実に再現なさるから!すんなり想像できちゃいます、ていうかゴッドさん愛されすぎだろ(爆)

……そして大して喋らないくせにやたら存在感推してるクレが心底気に入らない←ぇ
あいつは一回爆発するべき(キリッ)

翡翠さまぁー、幸せがたくさん詰まった素敵なお話を、どうもありがとうございました!




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