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落ち着いてよくよく話を聞いてみたら、この人たちはクロと一緒に旅をしてるらしい
丁度私とクロくん、ダークリンクくんと同じように
だからつまり、ここはクロがいて然るべきハイラルのあの子の居場所
私がいるべき場所じゃないのに、どうしてこうなった


「あー、主人公っつったっけ。一応聞くがお前の知ってるクロは、こう、黒尽くめで気弱で臆病で…」

「そのくせ偶に勇敢で、妙に常識に疎い。ちなみに愛馬にはイクサって名前つけてるわよ」

「あの野郎」


なるほど、あの鹿毛の馬の名の由来はこの男だったのか
確かに鼻梁を跨ぐ傷痕とか、イクサ号の顔の毛並みの特徴とそっくりだし
どんなに記憶が曖昧になってもクロの中にはイクサという男が息づいているわけだ
それほどまでに信用されてるなら、割と良い奴なのかもしれない、こいつ
だからちょっとだけ嫉妬、クロくんの一番かもしれないこの男に


「…ここ、ハイラルよね?」

「お、おう。何でそんな怖い顔してんだよ」

「でも、私がいるべきハイラルでは、ない…」


面倒なことだ、ここにあるべきはクロだ、どうせこんなふうになるならあの子が此処に来るべきだった
でもそうなると私たち、お別れをする暇もなく元いた場所に帰っちゃうってことで
それはそれで何となく嫌だわ、よく分からないけどこれでよかったって思うことにしましょ

石を投げつけたことに未だ怒ってるらしいグレイくんと、ムジュラくんっていうらしい怪しい長髪の人
親近感を覚えるのは何もグレイくんがダークリンクくんに似ているだけじゃない気がする
多分私が元のハイラルで一緒にいた人たちと関係があるんだと思う、イクサくんと同じ肌色のクレとかも、きっと



「あーあ、ややこしいことになったわねぇ」

「くふヒヒヒ、ゴシュウショーサマ!」

「心ない言葉をありがとうムジュラくん」

「まったく…あいつはいつも厄介事ばかり運んでくる」

「え、クロくんが?」


グレイくんのぼやきに私は敏く反応した
驚かざるを得なかった、だってあのクロが、厄介事を運んでくるなんて
私の驚きに、逆にグレイくんが驚いていた


「驚いたわ…人っている場所によって役割が変わってくるのね」

「ならお前の知る奴は違うとでも言うのか」

「ええ、頼りになる子よ。私のこといつも助けてくれるし」

「ぷフ、何だかクロじゃないみたいダネ」


三人の中で最もクロくんのことをよく知るらしいイクサくんが感心したように、あいつがなぁ…と呟いている
子の成長に感動する親のような表情だった、保護者とか言ってたしあながち間違ってなさそうだわ
そんなあの子に面倒事を押し付けるのはいつも私だなんてことは黙っておこう

夜風が私の頭を冷静にさせてくれた、クロくんの仲間だからと言ってこの人たちが私の仲間であるわけではないのだ
初対面の彼らに警戒心を持たない方が間違っている
もしあの子が、私と同じように、私の仲間であるという知らない者たちに出会ったら、同じような心構えを持つだろう
臆病ゆえの警戒心、それは時によく役立つから


「とにかく、クロくんを探さないと」


「クロはイナイよ」


私の独り言にムジュラくんがそう答えた
どういうことかと私より先にイクサくんが尋ねると、こんな答えが返ってきた



「クロと主人公の居場所が入れ替わっタんダ。ダカラクロはココにイナイ、主人公はココにいる。ヒヒヒ、不思議だネェ」



自分の気持ちに逆らわず腹立たしい声の持ち主に拳をぶつけた私を
イクサくんもグレイくんも咎めたりしなかった
そういう意味では二人とも案外良い奴だったかもしれない




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