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主人公は未だ水柱が噴き乱れる方へ走りだす

しかしその彼女の行く手を阻むのも水だった




「ぎゃ!!何コレ」


水の蔦が彼女の身体に巻き付き自由を阻んだ
その蔦の元を辿ると
それらは女の纏うローブの下から伸びていた




「クッソー…何で私の周りは人間じゃない奴が集まるんだ!」



主人公は藻掻き蔦を振りほどこうとするが
更に這ってきた水に完全に自由を奪われる



《貴方がいくら藻掻けど、…世界の破滅は免れられぬのです》



女はその青白い肌が段々と水の透明色に変わり
もはや人の原型など留めないまま声を発していた
声というよりも脳に直接響く音だった



「…何か知ってるみたいなこと言うじゃない、世界がどうなるって?」



主人公は水の蔦を引き剥がそうと拘束を押し広げるが
締め付ける力は更に強まる

(くっそ、こんな民家の屋根の上で死ねるかっ!!)

自由に動けないながらも右の手で身体にまとわりつく水を掴んだ
相手にとっては苦し紛れな羽虫の弱攻撃に思われたが
主人公の触れた部分が一瞬にして水蒸気と化し
彼女の拘束を緩める結果になった





《……!!》



「あれ、力が…使えてる!?」


それをしでかした本人さえも驚きの色を隠せずに自分の右手を確認する
手の甲には黒く浮かび上がった紋様が深く刻まれていた
主人公はその印を確認すると
口元をニヤリと綻ばせ未だ蠢く水の鞭に目を戻した




「『神様』なんて信用しないけど、今回の件は感謝するわ」




主人公は近くで隙を伺っていたらしい蔦の一つを掴み寄せた






「大地の炎、女神の片腕…全を無に帰す赤の力よ!!」



《―ア゙ア゙ァァァァ!!!》



真っ赤な炎が水の蔦を走り不気味に動いていたそれらは瞬きする間もないうちに姿を消した
叫びとも電子音とも聞き取れない悲鳴だけが後に残された


幾分か空気中の水分が多い気もしながら主人公は女の姿に戻った敵に歩み寄った
女は人型を維持できないのか足元から水として溶けだしていた






《おのれっ……、だが、我が心の核は此処には無い、この分身を消した所で何にもならぬだろう》



「別に本体を倒したいわけじゃないの、さっきの妙な発言について聞きたいんだけど…あとルピー袋返せ」


主人公はどうにか自分が優勢っぽく見せようと光の矢の一本を手に持ち
女の頭に突き付けて問いただした
しかし女は己の最後を知って敬語口調を改め
負け惜しみでもない不気味な微笑をした





《我が再びこの世に解き放たれたこと…終焉への序章に過ぎぬ》



「あっ…あぁぁ!!」



女は自発的に姿を空気に散らせた

謎を更に深める言葉と
シルバールピーの一つを残して






「六百ルピーがこんなんになっちった!!」









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