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「ふはは!勇者の影顔赤いよ!もしかして酔ってるう?」

勇者の影は自分の隣に座る無いに目を向ける。酔っているのかと言われれば確かに酔っているのだが、端から見れば彼女の方が酔いがまわっている。
そして勇者の影が酔う原因を作ったのもまた彼女で、
「影なんだから酔わないでしょ!クリスマスくらいパアッとやろうよ」
と無理やり酒を飲まされたのはまだ記憶に新しい。
額に手を当て、勇者の影は小さくうめいた。


「はれ?そーいえばクレとムジュラは?」
「…ムジュラがこの店を飛び出して悪さをしようとしていたからあいつが止めに行って…まだ、戻っていない」

そっか!と主人公はまた暢気に何杯目か分からない酒を胃に流し込む。
そもそも、悪さをしようと飛び出て行ったムジュラをクレに捕まえるように言ったのは主人公なのだが、それすらも酔いで忘れているらしい。勇者の影自身、認めたくはないがクレは主人公の為だったらすぐにムジュラを連れ帰ってくると踏んでいたのだが、やはりクリスマスのこの人混みではなかなかそうもいかないようだ。
勇者の影にとって煩わしい2人はいないものの、主人公がこうも酔っていては何をする術もなく。ただもてあましたグラスに灌がれる酒を呷るだけだった。





「勇者の影ー…」
「なん…だ、」

名前を呼ばれ、勇者の影は我にかえり声のする方へと意識を向けると、主人公が勇者の影の服の肘辺りをちょいと摘まんで控えめに引っ張っていた。突然の事にさすがの勇者の影も言葉が一旦途切れる。

「勇者の影、」
「どうしたんだ、主人公」

勇者の影が理由を問うても主人公はただひたすら勇者の影、勇者の影と彼の名前を呼び続ける。
そんな主人公の瞳は酔いのせいか朧気な光を帯びていて、少量の潤みに揺れていた。

「っ…、」

これはもしかしたら自分の忍耐力を試されているのかと勇者の影はひとり慌てるが、その間も主人公は勇者の影を呼び続けていた。
そして耐えきれず勇者の影は主人公をそっと自分の腕の中に押し込んだ。

「主人公、主人公…」
「勇者の影…」

主人公も勇者の影の行動に合わせるかのように自分の腕を彼の腰に回すと遠慮がちに力を込めた。


「勇者の影…す、き」
「……は、?」


突然呟かれた言葉に勇者の影#は耳を疑い腕の中の主人公を見下ろすが、そんな勇者の影の気持ちを知ってか知らずか主人公は無防備にすやすやと寝息をたてていた。

「俺だってお前の事…」


そう届くはずのない自身の気持ちを打ち明けようとした時、大して人の多くないバーのドアがばたんと開け放たれた。


「主人公様、ムジュラを連れ帰ってきました。遅くなって申し訳ありません」
「くっそォ!絶対主人公が追いかけてくると思ってたのニィー!何でお前なんダヨ!!」

2人の姿に気付いた勇者の影は直ぐ様主人公を腕の中から出そうと試みたが、主人公の腕は思いの外がっちりと勇者の影の腰にまわっており簡単には外れそうになかった。


「……」
「勇者の影…ボクの主人公にナニしてんノ…?」

その言葉と共に背後に禍々しい殺気を感じ、勇者の影は背中に嫌な汗をかきながら振り返った。
案の定そこには鬼のような形相の男2人がたっており、先程感じた殺気を放っている。


「勇者の影、お前殺ス…」


その後、クレがいとも簡単に勇者の影の腕から主人公を奪い取り、ムジュラの手によって勇者の影は数多の怪我を負うのだった。





(勇者の影!?どーしたの、その怪我)
(ああまあ色々あったんだ…ところで主人公、昨日俺に言ったこと…覚えて、いるか?)
(昨日?私勇者の影と話したっけ?)
((そこからか!))





あわわわ…!
す、すすすすすみませんでしたあ!!!


090102




* * *

キリエのほらぎ様から!一足遅くも、クリスマス夢をいただきました!!ほらぎ様が描いてくださったあのXmasイラストとセットです!!うっふぅー!(奇声)
ほろ酔い笑みを浮かべるあの勇者の影のエピソード…最終的に笑顔も消え去る地獄を見てしまったようですなぁ…うふっふぅー!!(何)
何と言いますか、我が家の子達をこれほどまでに、彼ららしく、描いていただけるとは!もおぉぉー感動ですっ!!!ムジュラもクレもしっかり息づいて、いい役回り貰ってますね。
しかし主人公さんがあんな大胆なことを…、もおぉーゴッドさんったら、襲っちゃうぞ!勇者の影が(止めなさい)
ほらぎ様ぁぁあ!素敵な夢を見させていただき、ありがとうございました!!





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