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先程の『隙あらば逃走』宣言から勇者の影は大人しく主人公の後を歩くようになった
自分の言い分をはっきりと伝えられて少し落ち着いたらしい



「もう夕暮れだ」


空を見上げれば綺麗なオレンジが目に入る
これでは王女への謁見も明日になりそうだ




「…宿に泊まるのか?」


「当然ね、こんな都会のど真ん中で野宿したらそれだけで連行されるっての」





「おい、君たち」



南の大門を過ぎた直後に呼び止める第三者の声に二人は揃って立ち止まった
門の前に立っている衛兵だった
もしかしたら城下に入るのに検問をしなければならないのかもしれないと主人公は一瞬ドキッとした
一人の男を鎖で繋いで歩いているなんてもろに怪しい行動を取っている理由を説明しろなんて言われても上手い言い訳は出来ない

立ち止まった二人に衛兵が近付き
主人公の心搏数も伴って高くなる


(やばいっ、どしよ!)


主人公はそろそろと勇者の影の背に隠れるように後退する
盾にされて前に出た勇者の影は面倒そうに主人公を一瞬見てから目の前の衛兵を睨んだ



「なんだ貴様」


「…え、いや、ただ最近ここら辺は盗難が多いから気を付けた方がいいと言いたかったんだが」




勇者の影の鋭い視線に圧倒されてどもるのは親切な衛兵だった
主人公は一気に気が抜けて力なく笑った



「あは、はははっ!なーんだ早く言ってよ!!もー」

「うぐ、いっ…やめろ!」

勇者の影の背をバシバシ叩いて気を紛らわせ
勇者の影は本気で痛がっているのを衛兵が心配した


「ところでその彼の鎖は……?」


「いやいやお気になさらず!んじゃ」



深く突っ込まれる前に鎖を引いて歩きだす主人公に
一泊置いてついていく勇者の影


もしかしてやばい不審者を町に入れてしまったかもしれないと
自分のしでかしたことを冷静に省みる新米の衛兵




(しかしあの男、どっかで見た顔だな)








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