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光が失われた影の世界は
また一段と暗くなってしまったようだと主人公は感じた

建物も、漂う空気も、もちろん影の人間の姿も暗さが多くなって
空の橙色がより赤みを強めたようにすら見える





「え?・・・ソルが無くなるとそんなにやばいの?」



尋常じゃない二人の落ち込み方に主人公は一人慌てた
何となくソルが大切であるような雰囲気は感じ取ってはいたが
野次馬の様子を思い出しても、やはり重要なことなのだと分かってはいたが

やはりこの世界に関わる者で無くては、その文明に刻み込まれた恐怖は理解できそうにない




「やばい、だと?・・・そんな暢気なもんじゃねぇんだよ!!」


「エレさん、あれ・・・あれッ」


ドリューが指で示す先

アクタの領域に蠢き、留まっていた暗闇が見える
主人公も目を凝らしてそれを注視した
黙って眺めていて、それの変化が目視できるようになるには数秒が必要だった


「動いてる?」


「・・・冗談じゃねぇ」


「何が?ちょっと、何なの?」


地平線を縁取るように在る黒い一帯が
徐々に、ゆっくり動いている
否、大きくなっていく




「避難命令出してこい、ドリュー!上の指示は待てねぇ!」


「永影の街ですか?」


「全地区だボケッ、一人残らず宮殿に誘導しろ!騎士団総出だ!!」


「ラジャです!!」



ドリューは体を黒い粒子に変えてどこかへ消えていった

戸惑いうろたえる主人公も、漸く迫る危機を知ったのは
アクタの黒い、水とも霞とも言えない影の塊が
遥か遠くから、地響きのような音を轟かせて、こちらに雪崩れ込んで来ているのを見たためだった





「な、にあれ!!?」



信じられない光景に目も口も全開で驚く主人公
あれらが物理的な被害を及ぼすのかどうなのか知らないが
もしそうだとすれば、巻き込まれた者は生きてはいられない

影の宮殿の一帯は高所に存在しているが、低地にある街は飲み込まれる危険性が高い
避難など間に合うのかと、どうしようもない心配をする主人公の腕をエレが痛いほど掴んだ








「え?」




「テメェだな、ソルを破壊した犯人は」







「え?、ええー!!?」




「陰りに生きる一族の者は、こんなふざけたことしねぇ」



エレが主人公の腕を握るとその手の隙から灰色の煙が上がる
彼は光に焼かれる痛みにか、限界を超えた憎悪にか顔をゆがめて主人公を睨んだ



これはやばい


その判断が一瞬でも遅ければ、また黒い檻に閉じられていたかもしれない
主人公は咄嗟に腕を引きエレの手を振り解くと
振り返る暇も惜しみ全力疾走で逃げ出した








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