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「疲れたー…」


疲労の具合からいってもう夕刻だろうか
黄昏の空は終始、殆ど顔色を変えないので時間の感覚が狂いそうだった

主人公の宿泊の為に用意された宮殿の、彼らにとっては豪華なものなのかもしれないが、薄暗く青い照明の、冷たさを雰囲気付ける一室
影の世界の雰囲気に未だ慣れない主人公は、影の世界流の持て成しに素直に寛げなかった


「はぁ…」


そして溜め息が吐き出されるのは
その日の内に襲った衝撃的な出来事が原因だった
勇者の影が消えてしまった先に見当はついたものの、救い出す術に誰も心当たりはなく
ミドナが、リンクの記憶を保持したままの数少ない人物であることは判明したが
何かの手掛かりになるようなことは得られず




更に主人公の予測が正しければ
ソルはそう簡単に譲って貰えそうにない



「影の世界の光『ソル』、一つは光の世界に持ち出されて壊された…そしてこの世界は今、光が不足している…ということは」



砂漠で大妖精に説明されたことと、エレに確認を取ったことを総じて考えると
ますますよろしくないようだと主人公は思った

光が不足するとどんな影響が出るのかなど知らないが
そう簡単に貰えるよう頼み込むことは出来ない雰囲気があったのだ

主人公はバルコニーの手すりに身を任せながら下を見下ろす
丁度宮殿前の広場が見渡せて
そうすれば自然に視界に入るのは中央に据えられた光輝く球体の存在


恐らくそれが件のソルなのだろう




(別に無理に貰わなくてもいっか…)


主人公はそう考えを改めて自己完結した
結局こちらの世界に渡ってくるのに大妖精の力を使わなかったのだから
その代価を払う必要もない



一つ、強制的に悩みの種を消して再び溜め息を吐き出し
主人公は室内に閉じ籠った

広いベッドに潜り、目を閉じて
何となく勇者の影を心の中で呼び続けていた





側に立て掛けた矢立の中で
微かに震えているものにも気付かずに







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