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「でぇぇい!!!」


ガン


「下手くそ」

「ッ、う、るせー!!」


一枚の絵画に斬りかかるも、何かを斬る手応えは得られなかった
エレが斬りかかった絵画の中では、先程まで手前に走り寄っていた騎馬がUターンして引き返していく
その一方で反対側の壁に掛かる絵画から
飛び出していたファントムガノンが落とす電撃を素早く避けながら
エレは主人公に怒鳴りつける

主人公はというと、やはり黒檻の中でぼんやり観戦していた
部屋のど真ん中にあるにも関わらずこの檻は高性能なもので
ファントムガノンの攻撃を全く寄せ付けないのだ


「もっと引き付けてから叩かないとダメなんじゃない?」

「テメェは黙ってろっ、てんだよ!」

平面の中に消えた魔王の影を目で追っていても無駄
かといって音を宛てにするにも、馬の蹄の音は円部屋に無限に反響する


「ボケがっ、!」


エレが走らせた視線で、再び絵画から飛び出そうとする影をとらえる
透かさず斬りかかるも先程の二の舞
双剣は絵画の額縁に跳ね返され別の絵から影の出現を許してしまった


「ぐ、っ…野郎!!この俺がこんなゴミに」



《芥なる記憶に非ず、我は魔王の記憶に留められているのだ》



「あぁ?」


「魔王、とか聞くと胸くそ悪くなるわ…!エレくん、さっさとそいつ倒しなさいよ」


「この俺に指図するな!」

しかし何度斬りかかっても同じ結果だった
完全に絵画から出てきている間には殆ど隙がない



「だぁぁークソ!!」


「反応が速すぎるんだ…囮にまんまとのせられちゃってるよエレくん」


「俺とは相性が悪いか…」

そう覚るとエレは剣を鞘に納めひたすら回避に徹した
見境が無い戦い方に見えたが意外と冷静も欠かないのだと主人公は感心した

エレは瞼を閉じ、何かに集中し始める
その間もしっかり攻撃を避けることを忘れないのは賞賛に値するが
しばらく黙ってから突然苛立ちを声にしてあげた



「ドリューのやつ!!呼び影に応じもしねぇぇ!あのボケ!」


「呼び影?」


「おい、ゴッド!テメェの連れを呼び寄せろ!頭の中で念じるだけだ」


わざわざその連れから引き離して拐ってきたというのに呼び寄せていいのだろうか
よく分からないが主人公は勇者の影を頭の中で呼んでみた

すると、主人公の下の陰りが形を変え始め
平面から立体へ、ただの黒から勇者の影の姿になって現れた






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